製造業や繊維・アパレル産業はTPPをおおむね支持-国際貿易委員会によるTPP公聴会(1)-

(米国)

ニューヨーク発

2016年02月03日

 米国際貿易委員会(ITC)は1月13日から15日にかけて、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に関する公聴会を開催した。公聴会では、産業別に業界団体や企業などが証言を行った。ITCは公聴会の内容を踏まえ、大統領と議会に、TPPが米国経済に与える影響に関する報告書を5月18日に提出する予定だ。公聴会の内容を2回に分けて報告する。前編は製造業や繊維・アパレル産業の証言についてで、これらの業界からはTPPによる経済効果を支持する証言が多かった。

<製造業では関税以外のメリットにも期待>

 製造業、繊維・アパレル産業や農畜産業からは、TPPが米国経済を活性化させるとの証言が相次いだ。とりわけ、これまで米国が自由貿易協定(FTA)を締結していない日本、ベトナム、マレーシアなどへの市場アクセスが改善することを評価する声が多かった。特に日本については、TPP参加国で米国に次ぐ市場規模を有することから、複数の産業で市場アクセス改善を評価する証言が出た。

 

 製造業では、TPP参加国の関税撤廃・削減によるメリットだけではなく、国営企業の活動や政府調達に関するルールが整備されたことを評価する声が聞かれた。ゼネラル・エレクトリック(GE)のカラン・バティア政府・政策担当副社長兼上級顧問は「国有企業が民間企業と対等な競争条件で事業を行うよう規定するルールが整備されたこと、政府調達において透明性がより確保されたことで、公平な環境でビジネスができる」と強調した。さらに、「GEが販売している製品のコストの約半分は、中小企業を含むサプライヤーから調達している材料費が占めている。GEのサプライチェーンを通して、中小企業と世界の顧客をつなぐことができる」とし、TPPは中小企業支援にもなると評価した。

 

<繊維・アパレル産業への効果は限定的>

 繊維・アパレル産業は、輸出入の両面において取引拡大が期待されるものの、その効果は限定的だとみている。市場アクセス改善による日本市場への輸出拡大や、繊維・アパレル製品の取引量の多いベトナムからの輸入増が見込まれる一方、厳格な原産地規則であるヤーン・フォワードルールが採用されたためだ。原糸からTPP参加国域内での生産・製造を求める同ルールの下では、米国で生産された綿花を欧州や韓国で加工し、ベトナムで製品にして米国に再輸入しようとした場合、TPP原産として認められない。この場合、TPPの関税削減メリットを輸入時に得ることができない。

 

 米国ファッション産業協会のジュリア・ヒューズ会長は「企業、消費者、労働者にとってTPPの効果を最大化するためには、グローバルな生産体制を構築している現状に配慮すべきだ」と強調した。

 

(赤平大寿)

(米国)

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