ブロンカ港の整備は順調に進展-サンクトペテルブルク周辺の港湾セミナー・視察会(2)-

(ロシア)

モスクワ発、サンクトペテルブルク発

2016年01月21日

 サンクトペテルブルク周辺の港湾セミナー・視察会報告の後編は、サンクトペテルブルク港南部のコンテナ埠頭(ふとう、CT)と西部のブロンカ港について。コンテナターミナル・サンクトペテルブルク(CTSP)は、従来スクラップヤードだった場所をコンテナヤードに変更し、コンテナ取扱量を拡大させている。ブロンカ港は24時間体制で、港湾整備工事が順調に進んでいる。

<コンテナ貨物の取扱量が拡大>

 CTSPを運営するCNSPのビジネスディレクターのイーゴリ・プフコフ氏は近年の同ターミナルの状況について、以下のように説明した。

 

 CNSPは輸送関係会社を中心とするUCLホールディングの一部。サンクトペテルブルク港のほか、ウスチルーガ港や南部のタガンログ港とトゥアプセ港にも貨物積み替え施設を有する。鉄道輸送会社では第一貨物を、海運会社では北西輸送とボルガ輸送を保有しており、タンカーや河川船舶を含む300隻を管理している。客船会社や造船所、船舶修理も持ち株会社に含まれる。

 

 大サンクトペテルブルク港(前編の図参照)におけるCTSPの貨物取扱量のシェアは、TEU20フィートコンテナ換算単位)ベースで2011年に4%程度しかなかったが、2015年には20%に達している。コンテナの取扱量は2013年にピークを迎えた後、経済制裁やロシアの対抗措置、通貨ルーブル安によってコンテナ流入量が減少している。政治的な問題は物流に悪影響を与えており、今後さらに減少するという予測もある。

 

 輸入貨物の取扱量を海域別にみると、近年、バルト海での取扱量シェアは減少傾向にある。一方、極東地域や黒海地域の取扱量が増加している。極東地域のシェア拡大要因はアジアからモスクワへの貨物輸送が増えているためだ。鉄道料金はルーブル建てで、ルーブル安により外貨での運賃負担が軽減したことが背景にある。

 

<鉄道利用の割合が高まる>

 CTSPは年間75TEUのコンテナの取り扱いが可能だ。コンテナヤード容量は18,400TEUで、リーファーコンセント(冷凍コンテナ用の電源供給装置)は1,148個。コンテナバースにはコンテナ専用船を2隻係留することができる。

 

 CTSPは従来、スクラップヤードだったが、これを順次コンテナヤードに変更し、拡張に取り組んでいる。スクラップはルーブル安の影響で輸出が伸びているものの、スクラップヤードを縮小する方針に変わりはない。

 鉄道線は4本あり、各71両まで受け入れが可能だ。鉄道とトラックの取扱量の比率は、以前は鉄道が13%、トラックが87%だったが、今では鉄道の比率が30%に高まっている。鉄道貨物の取り扱いは輸出向けが多く、輸入向けは少ないが、最近では自動車メーカーのフォードが週3回、ロシア国内の工場向けの輸送に利用している。モスクワ向けの鉄道利用も増えつつあり、これは新しい傾向だ。

 

 CTSPは高速道路にも隣接しており、最新の運搬機械とITサービスを導入している。税関はターミナルの外側にあり、検査場にはフェンスがないため、荷主が検査に立ち会うことが可能だ。検査場にはカメラが設置してあり、検査状況をみることもできる。日系精密機器メーカーの代表団が視察に来たこともある。

 

<ブロンカ港の強みはアクセスの良さと水深>

 サンクトペテルブルク市西部に位置するブロンカ港の運営会社フェニックスのサービス部門長タチヤナ・オゴロドニコワ氏は同港の特徴について、以下のとおり説明した。

 

 ブロンカ港の建設は2011年に始まった。ロシア連邦政府が159億ルーブル(約239億円、1ルーブル=約1.5円)、民間投資家が437億ルーブルを拠出する官民連携(PPP)プロジェクト(2013年1月8記事参照)で、運営会社のフェニックスは持ち株会社フォーラムの傘下にあり、同持ち株会社は不動産開発、建設、レストラン運営、リーガルサービス、測量機器製造など幅広い分野を手掛けている。

 

 ブロンカ港が他のサンクトペテルブルク周辺港と比べて優れている点は、水深が14.4メートルあり、8,100TEUのポスト・パナマックスクラス(パナマ運河を通行できないような超大型)の船舶が入港可能なことだ〔ちなみに、CTSPを含むサンクトペテルブルク港の各埠頭や、モビーディック(MD)は水深11メートルのため、最大受け入れ可能積載量は3,000TEU〕。これにより、ハンブルクやロッテルダムでのフィーダー船への積み替えが不要となり、1割程度コストが安くなる。ブロンカ港は環状自動車道路に隣接しており、鉄道も接続している。大サンクトペテルブルク港の中で最も立地が良い。コンテナヤード容量は45,500TEUと、サンクトペテルブルク周辺港では最大だ。

 

 この港のユニークな点として、どこの港にもいるカモメがいないことが挙げられる。カモメはごみに群がるが、ここでは廃棄物対策をしっかり行っているので、餌がないのだ。カモメがいないため、ふんが貨物に付着することもない。

 

 現在、ブロンカ港は24時間体制で港湾整備工事を行っており、今後はさらに同港東部のロモノーソフ付近まで港を拡張する計画だ。2015926日にリープヘル製のばら積み用クレーンを、107日にはコネクレーン製のRTG(タイヤ式トランスファークレーン)を設置した。

(齋藤寛、宮川嵩浩)

(ロシア)

ビジネス短信 fdfcaffbc1b2930a