国境SEZを投資誘致の柱に-改造内閣の産業政策(1)-
(タイ)
バンコク発
2016年01月21日
タイ政府は2015年8月の内閣改造以降、矢継ぎ早に投資誘致の新政策を打ち出してきた。その中でも、大きな柱となっているのが特別経済開発区(SEZ)の設置で、具体的には前内閣から引き継がれた国境SEZと、SEZの一形態と位置付けられる産業クラスターだ。これらの政策について、政府は2015年11月23日にバンコク、11月27日には東京で説明会を開催した。改造内閣の産業政策を3回に分けて報告する。初回は国境SEZについて。
<外国人非熟練労働者の雇用を認める>
国境SEZはフェーズ1、フェーズ2に分けられ、各5県、全10県の一部の自治体が指定されている。ただし、便宜上「○○県SEZ」と呼称しているため、タイ全土で10の国境SEZが存在している。国境SEZごとに奨励する産業グループが決められており、この産業グループに属する奨励事業を行う場合は「ターゲット業種」としての恩典が受けられる。ターゲット業種以外の奨励事業を国境SEZ内で行う場合は、法人税の免税期間がターゲット業種と比べてやや不利となる。
なお、タイ投資委員会(BOI)はSEZの中に、国境SEZと産業クラスターを位置付けている。以下、国境SEZを単に「SEZ」と表記する。
[SEZ内に立地した場合の恩典]
通常の場所に立地した場合と最も異なるのは、通常BOIが認めていない「外国人非熟練労働者の雇用」が認められることだ。国境に隣接しているSEZの利点を生かし、ミャンマー人、ラオス人、カンボジア人の非熟練労働者雇用が認められている。
BOI布告4/2557によると、SEZ内で行う奨励事業に付与される恩典と条件は、ターゲット業種、それ以外の業種について、それぞれ次のとおり定められている。
○ターゲット業種
(1)8年間の法人税免除、さらに5年間にわたる50%の法人税控除
(2)機械輸入税の免除
(3)10年間にわたり輸送費、電気代、水道代の控除を2倍に
(4)通常の減価償却以外にインフラの設置・建設費の25%の控除
(5)輸出向け製品に使われる原材料の輸入税の免除
(6)外国人非熟練労働者の雇用の許可
(7)非税的恩典〔外国人のビザ・労働許可(ワークパミット)の優遇、外国人による土地所有の許可など〕
○ターゲット以外の業種
(1)通常のBOI恩典に加え、3年間の法人税免税期間を追加(ただし、最長8年)
(2)8年間の法人税免税恩典(A1、A2の恩典)を受けている場合は、8年経過後、さらに5年間の法人税半減
(3)ターゲット業種の(2)~(7)と同様
なお、恩典を受けるための条件として、2017年12月30日までに投資奨励申請書をBOIに提出することが必要。
<ターゲット業種は13の産業グループ>
[対象産業グループと対象県]
SEZ内で特別に奨励する「ターゲット業種」は13の産業グループに分けられ、各県のSEZで対象となる産業グループが異なっている(表1参照)。
[SEZ対象地域・自治体]
前述のとおり、対象県全体がSEZとなるわけではなく、対象県のタンボン(自治体の単位)レベルで対象地域が指定されている(表2参照)。なお、SEZの対象地域を決める権限はBOIではなくSEZ政策委員会が有しているため、BOI布告ではなく同委員会の布告で発表されている。
[ターゲット業種]
2016年1月6日時点でBOIから布告としてターゲット業種が発表されているのは第1フェーズのみだ(添付資料参照)。第2フェーズについては、第1フェーズの奨励事業の追加事業と同様の事業が奨励事業(うち4事業にターゲット業種と同様の恩典を付与)として発表されているが(2016年1月6日記事参照)、第1フェーズのようなターゲット業種は発表されていない。
添付資料では、BOI布告1/2558-5/2558で第1フェーズの各県のSEZのターゲット業種として発表された事業について、上述の対象産業グループの並びに沿ったかたちで記載した。なお、通常のBOI恩典を付与する際の条件と比較して、SEZ内では条件が緩和されている事業がある。
(長谷場純一郎)
(タイ)
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