外資規制政策を改定、小売業、防衛などで緩和
(インド)
ニューデリー発
2016年01月05日
商工省は、外国直接投資(FDI)政策の見直しを発表した。製品をインド国内で生産するメーカーのネット販売が許可されたほか、シングルブランド小売業の国内調達条件が緩和され、ネット販売も可能になった。さらに、防衛分野における自動承認ルートの採用や、土地開発・建設分野における進出条件の一部撤廃なども盛られている。
<メーカーと小売業双方に電子商取引を許可>
インド政府は、FDI政策の一部規制緩和を決定、議会の承認を経て、2015年11月24日に通達を発表し、即日発効させた。モディ首相は「政府の開発と改革への取り組みは、明白で揺るぎないものだ。今回の規制緩和は、『小さな政府、確かな統治』を強調するものだ」とコメントした(「ビジネス・スタンダード」紙11月12日)。
今回の規制緩和により、インドで生産する外国の製造事業者については、シングルブランドであれば出資比率の多寡にかかわらず、政府の承認なしに、同製品の小売りおよび電子商取引での販売が可能になった。
また、シングルブランドの小売業については、国内製品調達の規制が緩和された。現在、シングルブランドの小売業は自動承認ルート(注)で外資出資比率49%まで、49%超は政府承認ルート(注)での参入が認められている。外資出資比率が51%を超える場合は、製品調達額の30%をインド国内からすることが求められている。この国内調達の扱いについて、「事業開始後、最初の5年間は製品調達総額の平均で30%を達成すればよいが、その後は1年ごとに達成することが要件」となっており、その起算タイミングについて、これまで「投資年の4月1日から」となっていたのが、「1号店の開業時から」に変更された。国内からの調達が不可能な先端技術を駆使した製品の場合、政府承認により国内調達規制の緩和が認められることも示された。また、既に店舗販売しているシングルブランド小売業者に対しては、製品を現地生産しているかどうかにかかわらず、電子商取引での販売も認められるようになった。
一方、零細小売業者保護の観点から、複数ブランド小売業については、緩和策には盛り込まれなかった。
<インフラ開発などの条件も削減>
防衛分野への外資出資比率は、これまで49%まで政府承認ルートで認められていた。しかし今回のFDI政策の改定で、これが自動承認ルートに変更された。また、最新の防衛技術の導入につながる案件であることを念頭に、手続きが面倒だといわれた内閣安全保障委員会(CCS)の承認により49%を超える外資出資が認められていたが、今回、より平易な政府承認ルートに変更された。
このほか、自動認可で100%までの外資出資が認められているタウンシップ、都市・地域のインフラ、住居、商業施設、ホテル、病院、道路・橋、教育機関、リゾート、娯楽施設に関する土地開発・建物建設プロジェクトについては、複数ある条件のうち、(1)500万ドルの最低投資額をプロジェクト開始後6ヵ月以内にインド国内に持ち込むこと、(2)建設プロジェクトの場合は、床面積2万平方メートルを開発の最低規模とするという、2つの条件が撤廃された。
(注)インドへの直接投資案件は原則、自動承認ルートと呼ばれる手続きで外資出資比率100%まで可能。ただし、FDI政策のネガティブリストに掲載された業種(外国直接投資が禁止・規制されている業種・形態、上限出資比率がある業種)は、外国投資促進委員会(FIPB)による個別承認が必要で、これを政府承認ルートと呼ぶ。
(古屋礼子)
(インド)
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