適合性評価を担い、消費者事故もカバーする公的機関INMETRO-中南米における基準・認証制度の動向-

(ブラジル)

米州課、サンパウロ発

2016年01月28日

 国家度量衡・規格・工業品質院(INMETRO)は、消費財や工業製品の品質向上を目的とした公的機関だ。主として製品やサービスごとの基準・認証の確立、製品やサービスが基準を満たしているかを確認する適合性評価を担っている。2015年には、子供向け製品、タイヤ、マットレスなどについての規制を策定した。ブラジルにおける基準・認証制度について、2回に分けて報告する。

<義務認証対象品目には注意が必要>

 INMETRO1973年に設立され、製品やサービスの品質向上などを目的に標準・規格・規定を定めている。また、製品やサービスが基準を満たしているか、しかるべきプロセスを経て製造されているかなどを確認する適合性評価についても担当している。

 

 INMETROによる適合性評価は、企業が自主的に認証を得る製品(自主認証)と、認証を得るのが義務となっている製品(義務認証)に分けられる。自主認証は、認証取得が当該企業のビジネスに有益となり、企業が製品の認証を受けるか決めることができるものなのに対し、義務認証は、認証取得が製品の製造・販売の条件とされているものだ。義務認証の対象となる製品および製品ごとの要件はINMETROが省令で定めており、ウェブサイトで義務認証製品リストの閲覧が可能となっている。同リスには、製品ごとに定められた適合性評価プログラム、根拠法令とその発効日、技術規格などが一覧表になっている。なお、義務認証対象品目でも、製品の技術スペック、用途、価格、使用条件によって適用対象外となるケースや、より細かい分類で個別の適合性認証の対象となるケースもあるため注意が必要だ。

 

<子供向け製品に監視強化の動き>

 2006年以降、INMETROは消費者事故の統計も作成しており、ウェブサイトで結果を公表している。製品群別の消費者事故件数は年により変動が大きいが、2015年に多かったのは、20分類の製品群のうち、容器・包装材、家電、子供向け製品だった。中でも容器・包装材については、2014年に事故件数全体の11%だったのが、2015年は25%に急増している。このほか、子供向け製品も201411%から2015年は16%に増えており、乳児のおしゃぶり(改造したもの)の流通を禁止したり、乳児用歩行補助器を義務対象品目にするべくパブリックコメントの募集(201512月)や、こどもの日の前後に玩具の一斉検査を行ったりするなど、INMETROによる監視強化の動きがみられる。

 

 また、ここ3年程度の傾向をみると、製品群別5位の自動車部品は、2012年に全体の1%にすぎなかったが、毎年漸増し、2015年には7%に達したのが注目される。

 

<省エネの監視が厳しくなる可能性も>

 2015年にINMETROによる規制強化で目立ったのは、タイヤ、マットレス、省エネ機器などだ。タイヤについては、改造タイヤを販売している業者への検査開始(2年後から)や、バイク用タイヤの改造に関する措置など包括的な規制を発表(決議55420151029日付)などの動きがあった。ポリウレタンマットレスについては、材料や密度などに対して消費者による識別を容易にするための新しい評価要件を発表した(決議349号/201579日付)。

 

 今後は、省エネ、節水機器について監視が厳しくなる可能性がある。INMETRO20154月に省エネ、節水関連の作業グループを立ち上げ済みで、太陽光発電機器の規制に関するパブリックコメントも受け付けるなどしている。

 

(竹下幸治郎、辻本希世)

(ブラジル)

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