リスク管理システムを基に検査を実施-北西税関局との意見交換会(2)-

(ロシア)

モスクワ発、サンクトペテルブルク発

2016年01月20日

 ロシアでの通関申告に際して、突然の課税標準価格・適用HSコードの修正要求や、以前よりも頻繁な抜き打ち検査に直面する日系企業が少なくない。北西税関局と日系企業の意見交換会の後編は、日系企業が抱える疑問・要望に関する質疑応答について。

<国際的な規則と同様のルール>

 北西税関局のミハイル・サフロノフ連邦税関収入局通関価格管理課長は、「今まで何年も同じHSコードや課税標準価格で通関許可を得ていたものについて、突然、修正要求を受ける日系企業が増えている。理由を教えてほしい」との質問に対して、以下のように解説した。

 

 ロシアでは国際的な規則と同様のルールにのっとり、リスク管理システム(注)に基づいて検査が実施されている。検査対象となるきっかけは、提出文書に間違い・欠落事項がある場合のほか、税関職員にとって不明な事項や書類に実際の商品と異なる記載がある場合だ。追加情報を求めるケースも多い。

 

 課税標準価格の修正を求めるのは、類似商品の価格とかなり異なる場合だ。商品価格の確認に当たっては、国際的な商品や類似製品と比較したり、ユーラシア経済連合(EEU)や日本の統計を活用している。価格に大きな差があることを発見した場合、理由が記載されていなければ、追加情報の提出を求める。数次にわたる確認・検査を実施し、申告書に記載されている価格を承認するか、それとも修正要求を行うかを、税関職員が決定する。申告者のみならず、生産者にも価格を確認する。

 

 税関ポストごとの見解の相違に関する指摘は何回も受けている。価格修正を要求する場合、必ず理由説明を行うようにしているが、それでも不明な場合はさらなる説明を求めても構わない。

 

<制限ない抜き打ち検査頻度>

 また、通関後管理総局通関後検査課のスベトラーナ・ラリナ主任検査官は、「これまで年23回の頻度だった抜き打ち検査が、12ヵ月ごとと頻度が増えている。また1回当たりの検査期間も以前より長くなっている。抜き打ち検査にかかる一般的な日数と検査実施の根拠について教えてほしい」との質問に対して、以下のように回答した。

 

 抜き打ち検査の頻度については、関税同盟関税基本法第16章、第19章に規定されており、通常は年1回程度と決まっている〔認定事業者(AEO)の場合は3年に1回〕。他方、同基本法第132条では、抜き打ち検査の頻度は制限がないとしている。検査期間は最長2ヵ月と規定されているが、税関局長の決定により検査期間をさらに1ヵ月延長することも可能だ。ただし、文書要求にかかる時間は2ヵ月の中に含まれていない。また、必要情報の提出がなければ、さらに検査期間を延長することができる。抜き打ち検査の対象となった場合、対象事業者は書面で検査実施理由についての説明を要求することができる。

 

 通関後検査も通関管理に欠かせないもので、貿易事業者に直接検査に赴く場合が多い。過去に何らかのルール違反を犯した貿易事業者は優先的に検査対象となる。検査の主目的は、第1に課税標準価格の正当性の確認、第2に適用HSコードの確認のほか、禁止・制限事項の順守に関する確認もある。検査対象の選定に関しては、貿易事業者を貨物取扱量、訴訟件数などによって幾つかのカテゴリーに分けて行っている。連邦税関局は検査対象の選定を、IT技術によって自動化する予定だ。

 

<英語で通関書類を提出する際はロシア語訳の添付が必要>

 日本側からは、201568月にジェトロなどが実施した、通関問題に関するアンケートの結果報告と税関当局に対する改善要望(土日の営業、情報照会への回答期限の短縮、英語による申告書提出など)を行った(2016年1月14日記事参照)。これに対して、エレナ・ペロワ通関検査実施局次長兼通関手続き・検査課長は以下のように回答した。

 

 土日に営業している税関ポストは存在する。しかし、土日営業しても、11件も申告書が提出されない税関ポストも多いため、サービスの必要性について見極める必要がある。他方で、貿易事業者からのリクエストがあれば、税関ポストごとに、土日の運営を検討することは可能だ。

 

 情報照会に対する回答期限は30日間と法律に規定されているが、複雑な照会ではなく、追加文書の提出も必要なければ、10日間程度で回答できる。緊急の場合、情報照会依頼状に対応期限を明記すれば、税関職員が優先的に対応する場合もある。

 

 通関申告時の追加書類の提出要求に関しては、貿易事業者から何回もクレームを受けている。他方で、(検査が不徹底で)不法行為を見逃した場合、税関職員が責任を取り処罰される。実際に処罰される件数は少ないが、皆無ではない。このような状況を理解してほしい。書類の言語については、関税同盟関税基本法でロシア語と規定されているため、英語で提出する場合は翻訳文を添付する必要がある。

 

(注)税関検査対象の商品、輸送方法、文書、輸入者について、適切な検査方法や検査レベルを決定するもの(2009年10月5記事参照)

 

(齋藤寛、宮川嵩浩)

(ロシア)

ビジネス短信 546a967fbba8a356