規制緩和が進み貿易は円滑に-中南米における基準・認証制度の動向-

(ペルー)

リマ発

2016年01月27日

 ペルーでは労務および税務面において特有の諸規則が多く、企業が負担を強いられているケースが見受けられるものの、財の輸入・販売面においては規制緩和が進んだため企業側の負担は軽く、障壁となり得る基準・認証は少ない。

15省庁の273手続きをオンライン処理>

 ペルーにおける品質基準の監督官庁は、2014711日付法律第30224号により、20156月に設置された生産省所管の国家品質庁(INACAL)だ。国内企業の競争力強化を目的に品質基準や各種認証制度について監督するほか、品質管理・品質向上に関する産業界へのキャパシティービルディング(能力向上・強化)も行う。国際的な品質基準を満たしていないペルー産品をバリューチェーンに組み込むことはできないため、INACALが基準・認証の諸規則の監督に加えて普及啓発活動を進めることで、国内産業の競争力強化を図る狙いだ。

 

 各種基準・認証のうち貿易に関連するものは、オンラインによる手続きが可能となっている。貿易手続きの円滑化を目的に20107月に導入された貿易単一電子窓口システム(VUCE)では、15の省庁が所管する273の手続きをオンラインで行うことが可能だ。マガリ・シルバ貿易観光相によると、同システムにより年間26万件の手続きがオンラインで処理されており、許認可が下りるまでの所要時間が大幅に短縮され、年間1,300万ドルのコスト削減に貢献していると試算する。例えば、輸出に必要な衛生証明発行の手続きは、20148月からVUCEで処理することが可能となったが、平均所要日数はVUCE移行前の20日から7日へと大幅に短縮した。2016年にはさらに多くの貿易関連手続きの電子化を進めるVUCE2フェーズへと移行する計画がある。

 

<加工食品などの生産・流通の衛生証明も簡素化>

 加工食品などの国内での販売許可手続きに関しても、2015924日付法律第1222号により規制緩和されることになった。同法は20161月末の発効が見込まれている。従来は保健基本法第91条により、加工食品・飲料および水産加工品は国産・外国産を問わず、国内で生産あるいは販売するためには、品目ごとに保健省保健環境総局(DIGESA)に申請して衛生証明書を取得することが定められていた。

 

 しかし今回の規制緩和では、大企業の場合、HACCP(危害分析および重要管理点)認証を生産工場あるいは輸入販売企業が取得していれば、食品の衛生証明書の取得手続きをせずとも、国内生産・販売が可能となる。零細・中小企業の場合、HACCPではなく基本的な衛生証明認証を指定機関より取得することで衛生証明書の取得は不要となる。なお、加工食品・飲料・水産品の輸入品は、従来どおり生産国側の衛生証明書や自由販売証明書の提出が必要だ。

 

 ペルー工業協会(SNI)は、この規制緩和は貿易手続きの円滑化につながると高く評価している。また、従来、衛生証明書の取得に必要だった試験所での検査費用などの削減につながるとしている。

 

<産業界の不安招く排ガス規制の導入>

 基準・認証に関連して産業界の不安を招いたものに排ガス規制の導入が挙げられる。ペルーでは自動車を生産しておらず、全て輸入となっているが、現在、排ガス規制はユーロ3が適用されており、自動車販売各社は国内販売のために、同規制に対応した車種を運輸通信省陸運総局から承認を得た審査機関に事前登録することが求められている。ペルー政府は、これまで201611日に排ガス規制ユーロ4を導入することを検討してきたが、ペルー自動車協会(AAP)は、ユーロ4に対応したエンジンに使用できる品質の軽油が国内で流通していないと指摘し、同排ガス規制の導入は時期尚早としていた。ユーロ4の導入は201711日からとする大統領令が201586日付で発布され、交通通信省は2016年中にユーロ4に適合する自動車の技術的要件および燃料の品質基準を定める予定だ。

 

 現在、自動車用燃料はレプソル系のパンピージャ製油所と国営石油公社ペトロペルーのタララ製油所、コンチャン製油所などで生産されているが、国産では需要を満たせず輸入に頼っている状況にある。また、国内で生産できる燃料の品質が低いため、高品質の輸入燃料を混ぜて品質基準を満たした自動車用燃料を供給しているのが現状だ。2016年中に燃料の品質基準の制定と流通に向けた準備が間に合うかが焦点となる。

 

(藤本雅之)

(ペルー)

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