対イラン経済制裁の解除をEUと共同発表-日本を含めた各国企業の市場参入に期待-

(イラン)

テヘラン発

2016年01月19日

 イランのザリフ外相とEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は1月16日、ウィーンで共同記者会見し、対イラン経済制裁の解除を発表した。イランの核開発問題に関する国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6ヵ国(P5+1)との共同包括行動計画(JCPOA)合意に基づき、国際原子力機関(IAEA)がイランの核開発の制限に係る履行義務を確認したことを受けたもので、今後、日本を含めた各国によるイラン市場への参入と、それに伴うイラン経済の活性化が期待される。

<イラン国内からも歓迎の声>

 116日に、IAEAによるイランの核開発制限の履行確認を受けて、イランのザリフ外相とEUのモゲリーニ上級代表が対イラン経済制裁解除に関する共同声明を発表し、JCPOAの合意内容の「履行の日(Implementation Day)」が到来した。

 

 今回の制裁解除を受けて、ローハニ大統領がツイッターで「輝かしい勝利だ」と発表したほか、ラリジャニ国会議長が歓迎の声明を発表した。最高指導者であるハメネイ師による声明は、今のところ発表されていない。このほか当地報道では、制裁解除を受けて各国とのビジネスが活性化することが大いに期待されていること、また、ローハニ政権にとっては、2月に予定されている国会議員選挙において追い風となることも併せて報じられている。

 

<テヘラン株式市場は関連株が上昇、為替もリヤル高に>

 制裁解除を受けて、金融制裁などの一部が解除されるとともに、イラン経済にとって最も影響があったとされるイランの原油輸出制限も撤廃されることになる。117日のテヘラン株式市場では、通信、石油・ガス、石油化学、造船などの企業の株価が上昇した。また、対ドルとユーロの為替相場は、これまでじりじりとリヤル安が続いていたが、制裁解除の声が聞こえ始めた110日から、一転してリヤル高に転じている。制裁解除により、イラン経済が上向くことが期待される。

 

<中国など各国がイランにアプローチ>

 これまでも、経済制裁解除を見据えた各国企業が「イラン詣で」を行っていたが、経済制裁の解除を受けて、各国および外国企業のアプローチも本格化することが見込まれる。

 

 中国は既に、習近平国家主席が122日にイランを訪問すると発表しており、中国の主要企業も同行する予定だ。制裁期間中の近年、イランの輸出入相手国の1位はいずれも中国であり、イラン国内での中国の存在感は大きい。今後、制裁解除を受けて各国が参入してくることが予想されるため、中国としても、これまでの権益・市場の維持を図りたい考えのようだ。

 

 また当地報道によると、ドイツや韓国なども、閣僚の訪問やビジネスミッションの派遣を予定している。201511月末には、ロシアのプーチン大統領もイランを訪れて存在感を示した。

 

<日本企業のビジネスにも追い風>

 制裁解除は、日本企業にとっても追い風だ。一部の制裁は残るものの、特に金融制裁が解除されることで、多くの分野・企業のイラン市場参入が可能となるが、実際のビジネス開始に当たっては、米国が発表したガイドラインを確認することも必要だ。

 

 日本政府としても、2015年の岸田文雄外相がイランを訪問した1012日に、投資環境を整備するための投資協定の締結についてイラン側と実質合意に至っており、両国間のビジネスを加速させたい考えだ。今後さまざまな分野において、日本とイランのビジネスが活性化することが期待される。

 

(中村志信)

(イラン)

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