自動車の安全装備や鉄鋼の強制規格など議論-中南米における基準・認証制度の動向-

(メキシコ)

メキシコ発

2016年01月22日

 メキシコの基準・認証制度の動向の後編は、日系企業に影響を及ぼしそうな改正動向を2つ取り上げる。1つは自動車の安全基準に係る規制、もう1つは鉄鋼分野における強制規格導入の動きだ。

<新車の標準安全装備を規定>

 自動車の安全基準(案)は、2015225日付経済省PROYNOM194SCFI2014「メキシコ公式規格(NOM)案:新車の安全基準に係る不可欠な装備(Dispositivos de seguridad esenciales en vehiculos nuevosEspecificaciones de seguridad)」でたたき台が公開されている。2月に案が出され、その後パブリックコメントを受けつつ、最終案を待つ段階だ。

 

 対象は、車両総重量3,857キロを超えない新車に組み込まれる安全装備。400キロ以下のものや、空港内、ゴーカート、レース場など限られた舗装道を走るもの、山地、砂漠、砂浜など特殊地形用のもの、二輪車、農業用、建設・鉱業用機械などには適用されないとしている。

 

 対象の新車を流通させようとする者は、第1段階として当該NOM案の表1に示された安全装備について、米国、欧州、日本、韓国、ブラジルないし国連基準のいずれかに適合していることが要求される。装備ごとの基準の参照番号は表中に示されている。第2段階として、当該NOM案の表2に示された衝突性能試験(正面、後方)をクリアする必要がある。これもいずれかの基準に適合していればよい。

 

 第1段階は当該NOM公布180日後に発効、第2段階については、発効日以降の新型車は3年後から、既生産型車は4年後から施行となっている。規格に適合していることを認証するため、第三者検証機関(Unidad de Verificacion)が設定される。

 

 上記はたたき台の段階で、最終案は見ることができないものの、各種報道や関係者の話を総合すると、(1)衝突性能に加え、アンチロックブレーキシステム(ABS)およびシートベルトリマインダー装置が第2段階に加えられる、(2)第1段階の安全装備は2017年型以降のみに適用される、(3)第2段階の施行は、新型車は2年後から、既生産型車は3年後からと1年前倒しにする、などの変更が加えられる可能性がありそうだ。

 

<鉄鋼の強制規格は実現性に疑問も>

 もう1つは、やや実現性が疑われているものの、実現すれば貿易の障壁となりそうな「鉄鋼製品に対する強制規格の導入」だ。20141222日付経済省PROYNOM195SCFI2014NOM案:鉄鋼の安全規格(Productos de hierro y aceroEspecificaciones de Seguridad)」で公開されている。

 

 要約すれば、鉄鋼関連製品について、それぞれの製品がもともと持っていたメキシコ任意規格(NMX2016年1月21日記事参照)を順守し、NMXで示された試験方法で新たに設置する第三者認証機関の認証を取ったものでなければ流通させないというものだ。メキシコ独自規格というのがポイントで、欧米や日本の規格との同等性は一切認めず、メキシコ専用としてこの規格をクリアする必要がある。このまま公布された場合、自動車(部品)メーカーなどが指定している材料であってもおかまいなしで、別途この認証を取る必要があるとしていた。

 

 パブリックコメントでは、鉄鋼を製造する当地の業界団体以外から軒並み反対意見が述べられた。主な主張としては、欧米や日本など諸外国の認証規格の同等性を認めるべきだというものや、メキシコ国内で生産できていない自動車用鋼板などはそもそも対象から除外すべきだというものがある。これを受けて経済省は201563日にいったん原案を取り下げている〔連邦規制改革委員会(COFEMER)ウェブサイト、SE37882〕。同文書では経済省が新案を提出するとしているが、今のところ改正案は提示されておらず、実現性はやや不透明となっている。

 

(中島伸浩)

(メキシコ)

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