主要農産物の輸出税の減免を発表
(アルゼンチン)
サンパウロ事務所
2015年12月28日
アルゼンチン政府は、農産物に課されている穀物輸出課徴金制度と称される輸出税の減免を公布した。国内の価格上昇の抑制を目的に開始された同制度は、農畜産分野の発展を妨げる要因になっていた。新政権は、本施策と為替管理制度見直しの相乗効果で農産品の輸出増とそれに伴う外貨準備高の増加をもくろむ。
<大豆・大豆関連を除き主要農産品の輸出税は0%に>
マクリ大統領は、主要農産品に課されている輸出税の減免を12月14日付で発表した。大豆および大豆の副産物にかかる輸出税は5ポイント減らし、小麦、トウモロコシ、ソルガム、ヒマワリ、牛肉などはそれぞれ0%とする方針を明らかにした(表参照)。
12月17日付で公布された政令第133/2015号で、農産品に関する減税の詳細が明記された。HS分類を基準にしたNCM〔南米南部共同市場(メルコスール)共通関税番号〕の品目分類のうち、第1~24類(動物および関連生産品、植物性生産品、油脂、食品、飲料など)、また第41~53類(皮革、木材、繊維、紡織用繊維など関連製品)について、輸出税率は0%とするとされている。また、これらの例外品目とその税率も定められており、大蔵・財務省のウェブサイト(スペイン語)で閲覧できる。
<20億ドルの歳入減をカバーする経済効果期待>
農産品をめぐる輸出規制については、2001年末の経済金融危機後に輸出税制度が導入され、2006年には国内需要の確保を目的とする政策の一環として、輸出量を制限する輸出規制である輸出登録制度(ROE)が導入された。
マクリ政権は、農産品に対する輸出税の課税は、農畜産分野を含む地方経済発展の阻害要因となっていたため、今回の施策を実施したと強調している。その背景として、小麦およびトウモロコシの作付面積の伸び悩みを挙げている(図参照)。ロサリオ穀物取引所によると、小麦の2015/2016農業年度の作付面積は340万ヘクタールとなり、前年比26%減少する見込みだ。トウモロコシも360万ヘクタールで、前年比、16%減となる見通しだ。大豆の作付け面積は、輸出税の存在にもかかわらず拡大していたが、輸出税課税は競争力をそぐとして、削減を望む声が強かった。
今回の輸出税の減免により約20億ドルの歳入減となるが、輸出増による事業者の収入増加に伴う法人税収の改善、新規雇用の創出、生産の新技術の導入のための投資拡大など、歳入減をカバーする経済効果を政府は期待している。また、本税の減免と12月16日に発表された為替管理制度の変更により、実質的な通貨切り下げが実現する相乗効果で、農産物の競争力は大幅に改善することになる。
<さらなる農業分野の規制緩和も>
政府は、こうした取り組みにより、今後3週間にわたって穀物類関連業者による1日当たりの外貨収入は4億ドルに上る、と試算している。実際に、そうした兆候が既にみられる。アルゼンチン油産業会議所および穀物輸出センター(CIARA-CEC)が12月21日に発表したデータによると、穀物類の輸出決済は、2015年12月14~18日に前週比6.7倍を達成し、4億8,145万ドルの外貨が流入した。
国内の主要農業団体であるアルゼンチン農村協会(SRA)、アルゼンチン農牧連盟(CRA)、農協団体連盟(CONINAGRO)、アルゼンチン農業連盟(FAA)は今回の施策について、選挙公約の実行は投資増加につながる、と高く評価している。なお、今回発表された政令には含まれていないが、穀物類、肉類、乳製品などの輸出手続きにおけるROEの撤廃についても迅速に取り組む、と農業庁長官のリカルド・ネグリ氏が表明しており、農業分野ではさらなる規制緩和が見込まれる。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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