韓国での「TOKACHI」商標拒絶事例を紹介-帯広で「海外における知的財産保護セミナー」-

(日本、韓国)

ソウル事務所

2015年12月04日

 ジェトロ北海道事務所は10月14日、帯広市で「海外における知的財産保護セミナー」を共催した。セミナーでは、韓国での「TOKACHI」商標出願に対する異議申し立てが認められた経緯について、実務を担当した崔達龍(チェ・ダルリョン)弁理士が紹介したほか、ジェトロと経済産業省北海道経済産業局が海外展開時の知的財産権保護の重要性や政府の支援策などを説明した。

<海外での知的財産権確保の重要性を強調>

 1014日に、ジェトロ北海道事務所は北海道経産局、北海道、帯広市、十勝町村会、帯広物産協会、十勝農業協同組合連合会と共催で、「海外における知的財産保護セミナー」を帯広市で開催した。このセミナーは、韓国で個人が「十勝」のローマ字表記である「TOKACHI」を商標出願したものの、韓国特許庁が北海道などの異議申し立てを認め、商標を拒絶した事例(2015年6月30日記事参照)を紹介するとともに、海外展開のための知的財産権保護の重要性や、政府の支援策を広報する目的で開催され、自治体、地域の生産者、マスコミなどから約70人が参加した。

 

 最初に、ジェトロ・ソウル事務所の笹野秀生副所長が「海外展開と知的財産」のテーマで講演した。同副所長は、国内市場の縮小により、日本企業が海外展開を促進する中、模倣品、抜け駆け出願・登録、営業秘密の流出などの被害を受けており、海外における商標など知的財産権の登録の重要性を強調した。さらに、技術を「公開可」「要秘匿」に区分し、前者は特許、後者は営業秘密として保護すること、模倣品は各国の制度に応じて対応すること、抜け駆け出願・登録は早期発見・対応が重要だ、と指摘した。

 

<迅速な対応が抜け駆け出願阻止のポイント>

 次いで、崔達龍国際特許法律事務所の崔達龍弁理士が、韓国における「TOKACHI」商標の抜け駆け出願事例の経緯について詳しく説明した。同弁理士は、ジェトロを窓口とした迅速な意思疎通、北海道など関係機関による証拠資料の収集などの積極的な協力、適切な異議申し立て人の選定が、商標登録を阻止できたポイントだったと述べた。また、韓国特許庁が抜け駆け出願を図るブローカーの根絶に取り組んでいることなど、知的財産権侵害に対する韓国内の変化なども紹介した。

 

 続いて、北海道経産局の室井誠特許室長が海外出願に係る補助金などの支援策について説明し、ジェトロ知的財産課の水田賢治課長は海外での知的財産保護に関するジェトロの取り組みについて紹介した。

 

<十勝のブランドと商品を守る活動を推進>

 講師らは、セミナーと前後して、北海道庁、帯広市などの自治体や十勝農業協同組合連合会、帯広商工会議所、帯広物産協会、公共財団法人とかち財団など地域の生産者関連団体を訪問し、「TOKACHI」事例の経緯を報告するとともに、意見交換を行った。

 

 十勝地域では、事業者や行政、関係団体が連携して「フードバレーとかち」構想を推進している。この構想では、(1)農林水産業を成長産業にする、(2)食の価値を創出する。(3)十勝の魅力を売り込む、といった活動をしており、十勝のブランド力強化や地域のブランドと商品を守ることが重要な取り組みになっている。また、とかち財団は十勝産の加工食品などの研究開発支援や、地域の農産物生産のための農機具などの開発を行っている。加えて、「十勝ブランド認証制度」を導入し、厳格な条件と審査を通じて、十勝のブランド力を高める取り組みをしている。なお、このブランド認証の取り組みは、「TOKACHI」商標事例の異議申し立てにおいても、十勝の著名性を立証するための証拠として活用された。

 

〔文炯逸(ムン・ヒョンイル)〕

(日本、韓国)

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