ビジネスフォーラムも盛況、関係者ら80人が参加-ジェトロが自動車関連企業交流会開催(2)-

(イラン)

ものづくり産業部、テヘラン事務所

2015年12月17日

 ジェトロは「イラン自動車関連企業交流会」の一環として、テヘラン商工鉱山会議所の協力を得て、11月17日に「イラン・日本自動車・自動車部品ビジネスフォーラム」を開催、交流会に参加した日本企業とイランの自動車・同部品産業関係者約80人が参加した。また、交流会参加の日本企業は、現地の自動車メーカー2社、自動車部品メーカー3社の工場を視察した。同交流会報告の後編。

<イラン側は日本企業の早期参入に期待>

 イラン・日本自動車・自動車部品ビジネスフォーラムを開会に当たり、テヘラン商工鉱山会議所のバフティアリ副会頭は「日本は東アジアの大国、イランは中東の大国であり、両国はさまざまな分野で協力できる。核協議の合意により、両国のビジネス関係の回復を期待するが、特に自動車分野での関係強化には今が好機。イランは自動車生産台数300万台を目指すこととしており、この目標に向けて日本企業の参画に期待する」と述べた。

 

 また、産業鉱山貿易省(MIMT)傘下にあり、産業開発政策を実施するイラン開発革新公社(IDRO)は、イランの自動車産業は石油・ガス産業に次ぐ重要産業で、特に雇用創出の観点から成長させていかなければならないと述べ、日本企業の早期参入を訴えた。民間企業からは、イランと日本の自動車部品メーカーなど2社ずつが講演し、それぞれのオペレーションとビジネス戦略について説明した。

 

 講演終了後には、日本企業17社とビジネスフォーラムに参加したイラン企業との個別面談がアレンジされ、ビジネス協力の可能性について議論した。

 

2025年には年産300万台が目標>

 ビジネスフォーラムの前に、MIMT自動車・パワートレイン産業局のアジッソラ・グダルジ次長が日本企業に対して、自動車関連の産業政策について以下のように説明した。

 

1)政府は2025年の自動車の生産台数として300万台を目標としている。そのうちの200万台が国内市場向け、100万台が輸出向けと想定している。

 

2)イランの自動車産業は今後、品質面での向上が必要で、特に部品の生産拡大が大きな課題だ。2025年には自動車部品の輸出額を600万ドルにすることを目指している。

 

3)信頼できる外国のパートナーとして、高い技術を有する日本への期待は極めて高い。イラン企業との合弁、直接投資などを通じて、技術移転を進めてくれることを期待する。MIMTとしても、こうした日本企業との産業協力を全面的に推進していきたい。

 

420163月に、自動車に関するコンベンションを開催する予定だ。日本からも多くの方々に参加してほしい。

 

 なお、環境規制に関連して、2014年に環境省によりディーゼル自動車に対する規制が導入され、排ガスが一定の数値を超える場合にはナンバープレートが付与されない政策を行っているとの説明もあった。

 

<現地メーカーの技術レベルを確認>

 交流会に参加した日本企業は、現地の自動車メーカー2社、自動車部品メーカー3社の工場を訪問した。自動車メーカーはイランホドロとサイパで、国内生産台数で1位と2位、両社の生産台数を合わせると国内全体の約90%を占めている。

 

 イランホドロでは、プレスショップ、ボディーショップ、ボディーコントロールルーム、アセンブリーショップの4工程を視察した。同社担当者の話では、政府の現地調達要請に基づいて設備や材料の現地購入を進めており、溶接機器などは全て現地調達に切り替えているそうだ。

 

 サイパでは、同社の主力小型乗用車「TIBA 2」のボディー製造工程を視察した。同社担当者によると、TIBA 2は部品と材料のほぼ全てを国内で調達している。近年、圧縮天然ガス(CNG)仕様への需要が高まっている。イランでは天然ガス資源が豊富なことから、今後CNG仕様の生産台数が増えていく可能性があるとのことだった。

 

 工場を見学した日本企業からは、「イランは情報が少ないだけに、実際に生産現場を確認できたことは良かった」「なかなか自社だけでは訪問できないイランホドロとサイパの工場視察ができ、意義深かった」「製造現場を見学でき、イラン自動車産業の実力を測れた」などのコメントが寄せられた。

 

 金融・経済制裁により、20122013年に生産が落ち込んだイランの自動車産業だが、一方で原料調達から部品製造、完成車の組み立てまでを国内で行えることは、同産業の成熟を意味しているともいえるだろう。また、人口約8,000万の国内市場があること、中東周辺国への輸出も視野に入ることは、自動車産業の発展に有利であることは間違いない。さらに、人件費が他の自動車生産国より低いことも、競争力を支えるものと思われる。他方、実際の生産現場においては、老朽化した設備や手作業の工程が多く、生産工程に改善の余地がありそうだ。日本のメーカーには、さまざまなソリューションの提示など、イラン側の期待は大きい。

(遠藤壮一郎、中村志信)

(イラン)

ビジネス短信 bed24f34e4c453ca