両国の連携強化に期待、協力覚書も締結-イスタンブールで日本トルコ・ビジネスフォーラム-

(トルコ)

イスタンブール事務所

2015年12月01日

 ジェトロは11月14日、トルコ海外経済関係評議会(DEIK)と共催で「日本トルコ・ビジネスフォーラム2015」をイスタンブールで開催した。本フォーラムは、11月15~16日にアンタルヤで開催されたG20サミットに先んじたもので、日本とトルコの経済連携の強化を図ることを目的とした。フォーラムでは両国首相らによる基調講演と、3セッションの講演が行われ、両国首相立ち会いの下、ジェトロとDEIKおよび独立工業・企業家協会(MUSIAD)との協力覚書も締結された。出席者は、両国の政府関係者や企業関係者らを合わせて約570人。

<ビジネス交流の深化に向けた覚書を締結>

 フォーラムは、1113日にパリで起きたテロ事件の犠牲者への黙とうから始まり、友好的・協力的関係の強化がいかに重要であるかを示す開会となった。冒頭、ジェトロの石毛博行理事長とDEIKのオメル・ジハド・バルダン会長が主催者を代表してあいさつした。石毛理事長は、両国の長く強固な友好関係にもかかわらず、トルコの貿易に占める日本の割合が1%にすぎないなど限定的なことを指摘。さらなる交流の輪を広げることで、ビジネス拡大の機会を創生する必要性を強調した。バルダン会長もこれを受け、日本トルコ経済連携協定(EPA)締結の早期実現を含めた多角的な協力関係への発展に期待を示した。

 

 来賓の安倍晋三首相は、両国の貿易投資関係は着実に拡大しているとした上で、トルコ建国100周年となる2023年の目標達成に、インフラ事業への日本企業の技術供与などで貢献することができる、と主張した。また、アフメト・ダブトオウル首相は、111日のトルコ総選挙後の最初の首脳として安倍首相を迎えることができたことや、10月のエルドアン大統領の訪日など、両国首脳の往来が類をみない頻度にあることを例示し、両国の関係が深化していることを強調した。2023年の目標達成がトルコの魅力をさらに高め、日本との経済関係強化にもつながるとした。

 

 続いて行われた、ジェトロとDEIKおよびMUSIADとの協力覚書(MOU)締結でも、両国の貿易投資促進に向けた協力枠組みの構築が眼目となった。トルコの主要企業や経済団体を構成員とし、世界120ヵ国との2国間経済委員会協力協定を持つDEIKとの覚書の締結により、トルコ国内だけでなく、第三国での協力にも貢献することが期待できるようになった。これまでも、ジェトロはDEIKとセミナー共催など多くの事業を共にしてきている。一方のMUSIADは、中小企業を核としたビジネス団体で、DEIKの構成機関の1つでもある。両国の中小企業交流の発展に強い関心を示しており、中小企業支援・育成にも貢献することが期待される。

 

<トルコでのインフラ開発の事例を紹介>

 フォーラムは、「トルコ社会およびインフラへの貢献」「トルコ企業との第三国におけるビジネス連携」「ニュービジネスへの挑戦」の3つのセッションから成り、日本とトルコの企業代表者らによる経験と期待が語られた。東洋鋼鈑との連携で知られるトスヤル(鉄鋼)のフアト・トスヤル会長(MUSIAD副会長)は、両社の連携事業が生産拡大や品質改善につながっていることを示した。また、江島潔国土交通大臣政務官は、日本の耐久性に優れ、長寿命でライフサイクルコストの低さが強みのインフラは、初期にかかるコスト以上の寄与がある、と強調した。続いて、大成建設、千代田化工建設、IHI、損保ジャパン日本興亜ホールディングス、チャルック・ホールディングの代表が、トルコのインフラ開発における経験と両国企業連携の広がりと強みを語った。

 

<第三国ビジネス展開に大きな可能性>

 トルコ企業と日本企業の連携は、トルコ外の第三国でも広がりをみせ始め、中東や中央アジアでのエネルギープロジェクトやインフラプラント事業などで成果を挙げている。今回の講演でも、伊藤忠商事、三菱商事の代表者が多くの成功事例を述べた。また、ダイキン工業のトルコ企業買収と中央アジア・コーカサスへの販路拡大や、トルコのサバンジュ・ホールディングの日本企業との協業や技術協力への期待なども表明され、トルコをハブとした周辺国でのビジネス展開が大きな可能性を有していることも示された。

 

 トルコに拠点を置くことのメリットは、層の厚い若年人口と都市化の進行による購買層の拡大といった内需だけでなく、地政学上の戦略的優位性にもある。この点に着目した日本企業のトルコ進出も増えている。金融では三菱東京UFJ銀行、メディアでは日経BPの代表者がそれぞれ進出の背景と展開を、三井物産と丸紅の代表者がトルコでの新規ビジネスの最新状況を説明した。日本企業のトルコでのビジネスは拡大を続けており、その存在感を強めていることを再認識させてくれるフォーラムとなった。

 

(中島敏博)

(トルコ)

ビジネス短信 bcc926813040aff2