為替管理緩和でペソの並行レートとの乖離が縮小

(アルゼンチン)

サンパウロ事務所

2015年12月28日

 アルゼンチン政府が打ち出した為替管理の緩和策により、現地通貨ペソが非公式の並行レートとほぼ同水準にまで下落し、公定レートと非公式レートの乖離が解消に向かっている。今後は、通貨切り下げによるインフレ上昇などが懸念される一方で、輸出の活性化が期待されている。

<乖離率は10%以内に収まるとの予測も>

 アルゼンチン中央銀行によると、為替管理制度の変更が公布された1217日は、ペソの対ドル公定レートの終値は前日比36.4%下落し、1ドル=13.40ペソとなった。当日の非公式レートは1ドル=14.36ペソにとどまっており、公定レートとの乖離が大幅に縮小した(図参照)。乖離率は今後、10%以内に収まるとの予測もある。

 今回の制度改正に当たり、プラットガイ大蔵・財務相は、為替レートの変動は原則、市場に任せるとする一方、行き過ぎた相場の動きに対しては、中央銀行による介入の可能性もほのめかしている。

 

 今回、外貨購入規制が解除されたことで、ドル買い需要が急増し、ペソが極端に切り下がる可能性も懸念されていたが、1222日時点の公定レートは1ドル=12.98ペソと、制度が変わった17日よりドルに対して強含みとなっている。また、非公式レートとの乖離率も、制度導入後は7%程度で推移している。

 

 現地エコノミストらは、ペソの下げが止まった理由として、12月はボーナス支給などによりペソ需要が高水準にあることに加え、為替管理緩和の前に、中銀が発行する預託証券(LEBAC)の金利(35日)を38%に上昇させたことを挙げている。また、1221日には定期預金金利を4ポイント上積みし、1214日比で約30%引き上げたことなどにより、ペソの需要が増えたことも影響しているとみている。

 

 ただし、政府が1222日にLEBACの金利を2ポイント低い36%に引き下げたことに加え、輸入代金の決済に必要な外貨購入が1月以降に本格化することが、今後のドル買い要因になり得る、と市場関係者はみている。

 

<輸出増に期待もインフレを懸念>

 現地の民間調査会社の多くは、為替管理制度の緩和とペソ下落政策が、経済活性化には必要不可欠だった、としている。妥当な為替レートとしては1ドル=約15ペソを挙げるところが多い。大手アベセブでは、今回の改革は主に輸出事業者にとって大きな追い風になるとともに、対内直接投資拡大の契機になるとの見方を示している。輸出税の減免とペソ切り下げによる農産物の輸出拡大で、農薬や農業用機械類分野の活性化が期待できることが、そうした見方の背景にある。鉱業、石油、鉄鋼業のほか付加価値の高いサービスを輸出するソフトウエア産業も、今回の為替政策の変更を待ち望んでいた。

 

 他方、アルゼンチン中規模企業連合(CAME)は、国内の中小企業の80%は国内市場に依存していることを踏まえ、ペソ下落に伴うインフレ上昇と、それによる消費者の購買力低下を懸念している。民間調査会社の見通しでは、201511月から12月にかけての2ヵ月間で消費者物価指数は10%上昇するとされ、特に12月上旬に加速したという。政府は今後、企業や労働組合との話し合いなどを通じながら、インフレ対策を急ぐことにしている。

 

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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