通関後の模倣品摘発に向け流通ルート調査を計画-知財保護について当局と日本企業が意見交換-

(ロシア)

モスクワ事務所

2015年12月16日

 ジェトロは11月26日、水際での知的財産権の保護活動について、ロシア連邦税関局と日系企業の意見交換会をモスクワで開催した。連邦税関局側が、模倣品の摘発状況や通関後の模倣品流通ルートの調査計画を明らかにするなど、日系企業との活発な質疑応答が行われた。

<摘発件数は前年同期比1.5倍>

 意見交換会では、まず連邦税関局の貿易規制・通貨輸出管理局知的財産製品管理課のオレグ・アシュルコフ課長代理が、税関登録および模倣品摘発件数に関する最新の統計について、次のように説明した。

 

 税関登録されている知的財産は20151126日時点で3,847件あり、そのうち99%が商標だ。201519月末の模倣品摘発件数は、品数ベースで前年同期比1.5倍、1,420万個の被疑侵害品を差し止めた。金額に換算すると35億ルーブル(約63億円、1ルーブル=約1.8円)に上る。その間に行政訴訟になった案件は721件で、699件は商標権の不正利用、22件は著作権侵害だった。

 

<警察との連携を強化>

 次に、連邦税関局の通関後管理総局支払対策課のセルゲイ・トレチャコフ主任検査官が、通関後の模倣品摘発の取り組みについて、以下のように発表した。

 

 通関後の模倣品摘発は最近のトレンドで、商品の輸入通関後のみならず、輸出通関後の取り締まりも強化している。また、ロシア国内で不法に流通している商品も対象としている。2014年の摘発実績は236件、そのうち30件で約85,000点の商品を没収・廃棄した。2015年のこれまでの摘発実績は181件あり、13件で約25,000点を没収・廃棄した。

 

 小売・卸売市場で商品が不法に流通しているという情報が寄せられれば調査を開始する。税関当局はロシアの行政違反法に基づく捜査権限を有しており、権利侵害品を没収し、違反者を行政違反で起訴することができる。起訴の際は、多くの場合で権利者から十分な情報提供があり、大変助かっている。手順としては、まず小売店に警告状を送付する。反応がなければ警察へ移管し、行政・刑事責任を追及していくことになる。

 

 通関後の摘発で障害となるのは立証責任だ。違法に国内に流入した(ロシア連邦国境を越えた)という証明が困難なケースがしばしばある。このため、捜査権限のある警察などとの協力が不可欠で、連携を強化している。今後はロシア国内にとどまらず、関税同盟域内での取り締まりも強化する方針だ。

 

 ロシアへグレーあるいはブラック通関(注1)されるルートを調査するため、20164月からパイロットプロジェクトを開始する予定だ。全ての商品に個別番号を付け、ユーラシア経済連合のどこの税関ポストを経由し流入したかトレースする。対象品目は、高価でかつ流通量の少ない一般消費材。また、権利者の利益保護といった観点も考慮し選定する。

 

<写真による模倣品認定は可能>

 出席者との質疑応答では主に以下のようなやり取りがあった。

 

問:通関後の模倣品摘発における荷送人や輸入者、販売者などのブラックリストは存在するのか。

 

答:ブラックリストはないが、リスク管理システム(注2)を導入している。過去に違反があれば、本システムに基づき税関検査を厳格化する。他方で、連邦レベルと地方レベルでは、異なる基準でリスクを管理している。地方税関レベルにも情報提供を行えば、より差し止めの可能性は高まる。また、模倣品と正規品の流入ルートは違う場合が多い。この点は、企業からぜひ情報提供してほしい。

 

問:疑義品が差し止められた際、税関から写真を権利者に送ることは可能か。また、写真から真贋(しんがん)判定が可能な場合、写真のみで模倣品の認定を行うことは可能か。

 

答:税関からeメールによる写真および情報の提供、権利者による写真のみでの模倣品認定は可能だ。また、企業ごとにアカウントを付与し、オンライン上でのやり取りができるシステムを導入する予定だ。

 

(注1)グレー通関とは、輸出入時に虚偽の申告を行い、正規の輸出入関税を納めずに通関手続きを行うこと。ブラック通関とは、通関手続きを経ずに輸出入(密輸)することを指す。

(注2)税関検査対象の商品、輸送方法、文書、輸入者に基づき、適切な検査方法や検査レベルを決定するもの2009105事参照)

 

(齋藤寛、櫻井洋介)

(ロシア)

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