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高技能を有するウクライナ人の就労手続きを簡素化-将来的には対象職種や国籍の拡大も-

(チェコ)

プラハ事務所

2015年12月01日

 チェコ政府は11月9日、ウクライナ人に対する就労カード交付手続きを簡素化するパイロットプロジェクトを承認し、内閣決議書を公布した。これにより、同国出身の高技能労働者や専門家に対して、就労カードや高技能の外国人労働者向けのブルーカードの発給が迅速化される。

<国内労働市場の深刻な求人難に対応>

 このプロジェクトの目的は、多くの企業が高技能者の不足に悩む国内労働市場の改善にある。201510月末の失業率は5.9%と前年同月より1.2ポイント低下し、失業者数は43432人で、2009年以降の最低を記録した(図1参照)。また、201510月の求人数は107,324人で、前年同月に比べほぼ倍増した。チェコ産業連盟によると、国内企業の3分の2が大卒技術者の長期的な求人難状態にあり、また半数が高卒者の不足を訴えている。

 今回のパイロットプロジェクトの対象はウクライナ国籍の大卒者だが、IT部門におけるアナリストやソフト開発者、機械エンジニアなど一部の職種専門家においては高卒者も可とされる。申請者は、学歴・技能を証明する文書の提出が必要で、当面の対象人数は年間500人に限定されている。プロジェクト要旨ではウクライナ人を選定した理由について、「ウクライナ人の比較的高い知識・技能、および同国における現状を鑑みた」と説明している。また、ボフスラフ・ソボトカ首相は「チェコ社会に容易に融和し得るため」とも指摘し、チェコ経済会議所のイレナ・バルトニョバー副会頭は「ウクライナ人は、精神面でも、文化的にもチェコの環境に近い。社会への適応が非常に早く、3ヵ月程度でチェコ語をマスターできるため、チェコ企業に歓迎される」と言及している。

 

 ウクライナ人のチェコ滞在ビザ申請者は、通常、まずビザ申請予約システムに登録し、その後、チェコ在外公館でインタビューを受けることが義務付けられている。これに対して、上記条件を満たしている就職希望者の申請は、この過程を経ることなく在外公館に受理され、その後、内務省でも優先的に処理される。その後の就労カードあるいはブルーカードの発給プロセスは通常どおりだ(2011112日記事2014619日記事参照)。

 

 一方、雇用者側の対象は、チェコ国内での営業期間が2年以上で法人税を納税し、健康保険と社会保険の納入者として登録されている企業で、かつ所得税・社会保険料・健康保険料の未払いがない会社だ。対象企業はa.当該就職者に対して、ブルーカード所有者に適用される最低賃金を下回らない額を給与として支給することb.最低1年間正社員として雇用することを証明する必要がある。プロジェクトの活用を希望する企業は、チェコ経済会議所、チェコ産業連盟、中小企業連盟(AMSP)、雇用者・事業連盟連合(KZPS)あるいはチェコインベスト(チェコ投資・ビジネス開発庁)などから得た推薦状を添付し、産業貿易省に所定の申請書を提出する。対象となるポストは、まずチェコを含むEU諸国民向けに求人広告がなされ、30日以内に就職希望者が現れなかったものに限られるため、チェコの労働市場を混乱させることはない、と政府は説明している。

 

<高学歴・高技能者限定に経済団体は不満を表明>

 同プロジェクトの草案段階から、審議に参加しているチェコ経済会議所は、基本的にはウクライナ人を対象とした就労カード発給簡素化を歓迎している。しかし、対象者を高学歴・高技能者に限定している点に関して、国内企業の要望に合致していないと批判している。「チェコ工業部門では、いかなる分野においてもブルーカラー層が最も不足している(図2参照)。チェコ人失業者の中で、就職のために転居もいとわない者は少数派で、これにEU諸国民を加えても、大部分のポストは埋まらない状況にある」と、バルトニョバー副会頭は指摘し、政府に対して、ブルーカラー層も加えた、統合的なシステム導入を求めている。

6ヵ月間の結果をみてブルーカラー層に拡大も>

 これに対して、ルボミール・ザオラーレック外相は、パイロットプロジェクトを6ヵ月実施し、その結果を分析した上で、ブルーカラー層も含む対象職種および対象者の国籍を拡大していく予定だ、と説明している。

 

 ソボトカ首相は、パイロットプロジェクト開始と同時に、労働・社会福祉省に対して、国内求人状況および求職者構成に関する分析を実施するよう要請した、と述べた上で、「政府の長期的な目標は、あくまで職業訓練などのアクティブ雇用支援政策を利用した雇用の実現だ」として、外国人労働者の誘致が主目的ではない点を強調した。

 

(中川圭子)

(チェコ)

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