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労働許可と滞在許可を「就業カード」に一本化−改正外国人滞在法を公布−

(チェコ)

プラハ事務所

2014年06月19日

改正外国人滞在法が2014年6月9日、公布された。これにより、6月24日から従来の就労ビザ、就業滞在許可証に代わって「就業カード」が発行されることになる。

<就業カードの有効期間は最長2年>
改正外国人滞在法でいう「外国人」とは、EU、欧州経済領域(EEA)加盟国(ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)、およびスイスの国籍を持つ者、またその家族でEU、EEA、スイスにおける滞在許可を有する者を除く外国籍の者全てを指す。日本国籍保持者も対象だ。

今回の改正外国人滞在法は、これら外国人を対象とした滞在許可と労働許可の発給手続きの一元化を定めたEU指令(2011/98/EU)に基づき、制定された。

チェコでは、従来の就労ビザ申請に当たっては、まず労働局に労働許可を申請し、労働許可証(あるいは申請番号)をビザ申請時に提出することが義務付けられていた。今回の改正により、この2段階申請システムが廃止され、労働許可と滞在許可を一本化した就業カードの申請で済むようになった。また、従来の就労ビザ有効期限は6ヵ月で、滞在期間が6ヵ月以上の場合は長期滞在許可を申請する義務が課されていたのに対して、就業カードの有効期間は最長2年と定められている。

ただし、就業カード発行対象となる就労ポストは、労働局のシステムに登録したものでなければならない。

実際の申請手続きは以下のとおり。

(1)企業は、労働局に就労ポストの空きを申告する。当該ポストが登録後30日以内に埋まらない場合、労働局は企業の許可を得た上で当該ポストを「就業カード所持者が就労し得る就労ポスト」のシステムに登録する。

(2)外国人は、就業カード発行申請書に上記登録番号を記入し、これをチェコ在外公館に提出する(注1)。就業カード発行申請書のほかに、従来どおり以下の書類提出が必要。
○パスポート、写真
○資格、専門技能証明書
○住居証明書
○無犯罪証明書(ただし、要請がある場合のみ)

従来、労働許可申請に「雇用主の当該外国人雇用宣誓書」が必要だったが、これに代わって、就業カード申請には雇用契約書、あるいはこれに類するものの提出が義務付けられている。契約書は、賃金が最低賃金を上回るものであること、1週間当たりの労働時間が15時間以上であることを証明するものでなければならない。

(3)上記書類申請後60日以内に、申請を行ったチェコの在外公館から「就業カード受給用長期ビザ」が発行される。発行に先立ち、旅行保険の証明書提出が要求される場合がある。

(4)チェコ到着後の3労働日以内に内務省分館で、バイオメトリック・データ(注2)を提出。提出と同時に、その場で「就業カード発給条件履行証明書」が発行される。この発行日より、当該外国人は就労可能となる。

(5)バイオメトリック・データ提出日から60日以内に、就業カードが発給される。これは許可を受ける外国人本人が受け取る必要がある。

<派遣駐在員や会社役員は例外>
就業カード制度には、例外が設けられている。この例外に該当する場合、その就労ポストは上記の「就業カード所持者が就労できる就労ポスト」の登録対象外となる。例外ケースは以下のとおり。

(1)特定の外国人が、外国企業からチェコの法人や自然人との契約によって生じる業務を遂行するため、チェコ国内に派遣される場合
(2)特定の外国人がチェコ法人のパートナー、取締役そのほか法人代表機関のメンバーである場合

上記(1)(2)に該当する場合には、従来どおり労働許可証を申請し、就業カード申請時には労働許可証あるいはその申請番号を提出する義務が生じる。この場合、就業カードは従来の滞在許可の機能のみを果たすものと見なされる。ただし、上記(1)(2)に当たる場合も就業カード申請書類は上述と同様に、雇用契約書、あるいはこれに類するもの(賃金が最低賃金を上回るものであること、1週間当たりの労働時間が15時間以上であることを証明するもの)の提出が義務付けられる。

就業カード、または現時点で既に就労ビザを取得している者は、内務省分館で就業カードを申請する。既に労働目的の長期滞在許可を取得している者は、その延長の際に就業カードを申請することになる。

就業カードは、有効期限の30〜14日前までに内務省分館に申請することで、有効期限を延長することができる。延長に必要な書類は、就業カード発行申請に必要な書類に準ずるが、資格や学歴証明は例外的な場合を除き免除される。なお、延長の場合にも、あらためてバイオメトリック・データの提出が必要となる。

今回の改正により、グリーンカード制度が廃止され、今後グリーンカードは発行されなくなる(2008年10月20日記事参照)。既に発行されているグリーンカードは、自動的に就業カードと同じ機能を持つものとして見なされ、カードに記載されている期限まで有効とされる。一方、ブルーカード制度は存続し、今後も就業カードとは別にブルーカードの発行が行われる(2011年1月12日記事参照)

変更内容は、内務省のウェブサイトで確認できる。

<企業団体は改正法に不満を表明>
改正法に対して、基本的に与党、野党ともに賛意を表明したため、法律成立過程は比較的順調だった。反対票を投じたのは、日系人オカムラ議員を党首とする政党「ウースビット」の議員のみ。オカムラ党首は、就業カードを取得した外国人が職を失った場合、自動的に失業保険支給の対象となるべきではないと主張し、外国人に対する社会福祉補助金交付を制限することを提議したが、他党がこれに反対し、否決された。

一方、チェコ産業連盟は、同改正案は手続きの一本化を定めたのみで、簡素化にはいたっていないとして不満を表している。

具体的には、就業カード申請時の書類に、依然として「資格、専門技能証明」が含まれていることを指摘し、法文中の「外国人の受けた教育が当該職務の性格に適していないと内務省担当官が判断した場合には、チェコ国内の当該機関の証明を受ける必要がある」の文言に関して、内務省の担当官には、資格、専門が当該職務の内容に適当であるか否かを判断することはできないとして、高卒、大卒など、各職務に要求される学歴証明のみとすることを提言している。また帯同家族に対するビザも、当該外国人に対するビザと同時に発給されるべきだと主張している。

また、産業連盟は「チェコは、欧州で滞在ビザ発給手続きが最も複雑な国とされている。このことはチェコへの投資促進、国際競争力の向上を妨げるものだ。チェコ経済にとって、就労ビザ発給期間を短縮し、国内に進出した企業に高質労働者の確保を保証することは、最優先事項の1つに数えられる」と表明している。

(注1)日本国籍保持者は、在日チェコ大使館のほか、各国のチェコ領事館、大使館への提出も可能。
(注2)バイオメトリック・データとは、生態認証技術による個人情報記録のことで、具体的には顔写真と指紋を指す。
(注3)本記事記載の手続き情報は執筆時点の情報に基づく。実務手続きを進める場合、チェコ在外公館に問い合わせ、最新情報の確認を。

(中川圭子)

(チェコ)

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