生産・販売は回復傾向、制裁解除後の発展に期待-ジェトロが自動車関連企業交流会開催(1)-

(イラン)

ものづくり産業部、テヘラン事務所

2015年12月16日

 金融・経済制裁の解除に向けたロードマップが7月14日に、国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6ヵ国(P5+1)とイランの間で合意されたことを受け、イランビジネスへの関心が高まっている。とりわけ、非石油・ガス部門では自動車産業に注目が集まる。テヘラン市内で第10回自動車部品国際見本市(IAP 2015)が開催されたのに合わせて、ジェトロは11月16~18日の3日間、「イラン自動車関連企業交流会」を開催、日本企業17社が現地自動車メーカーや部品メーカーの工場訪問、国際見本市の視察、イラン企業との交流会などに参加した。同交流会報告の前編。

GDP10%を占める重要産業>

 イランの自動車・同部品産業はGDPの約10%を占め、石油・ガス産業に次ぐ重要産業と位置付けられる。過去の生産台数のピークは2011年で、約165万台に達した。金融・経済制裁強化の影響で2012年、2013年と急速に減少したが、2014年には前年比47%増の109万台へと回復した(図1参照)。国際自動車製造業者機構(OICA)のデータによると、これは世界で18番目の生産台数だ。

 制裁解除後には、生産台数のさらなる増加が見込まれる。ちなみに、321日に始まるイラン暦の2014年の生産台数は113万台で前年比53%増、2015年の最初の5ヵ月間は44571台で前年同期比8.7%増と伸び続けている。OICAによると、西暦2014年の国内新車販売・登録台数は129万台で、生産台数と同様に制裁の影響で2012年、2013年は減少したが、2013年(80万台)の約1.6倍に増えており、需要は回復しつつある(図2参照)。

 さらに、政府は2025年までに年間の生産台数を300万台まで引き上げるとする野心的な目標を掲げており、そのために外資優遇政策などのビジネス環境整備を進めている。政府および自動車・同部品企業は、外国企業との合弁や技術導入などを通じたビジネス拡大、品質向上を模索しており、世界の自動車市場を牽引する日本企業の優れた技術やノウハウに高い期待と関心を寄せている。

 

 近年、政府は大気汚染対策など環境規制を強化する方向性を打ち出しているが、これには国産自動車の品質向上を促す狙いもある。201512月には排ガス規制を強化する予定で、日本の自動者関連企業の技術的な優位性が発揮できる状況が訪れる可能性も高い。

 

<現地企業も存在感を示す>

 IAP 2015111619日の4日間、テヘラン国際見本市会場で開催された。外国パビリオンでは、中国、台湾、韓国、トルコ、インド、ドイツなどがナショナルパビリオンを組織して出展した。これら6ヵ国・地域では、見本市主催者のイドロ・インターナショナル・トレーディングが現地セールスエージェントを指定しているという。

 

 ナショナルパビリオンの中では、中国の出展規模が400社以上と突出していた。また、出展企業数では中国に及ばないものの、展示面積ではトルコパビリオンも大規模だった。

 

 インドの出展企業の中には、日本企業との合弁企業が1社あった。この企業にイランビジネスについて聞いたところ、「まだ細々だが今後の可能性が十分考えられる市場なので、継続的にアプローチしていきたい」とのことだったが、「価格競争力があり、金融・経済制裁の強化後に市場への浸透度を高めている中国製品には脅威を感じる」とも話していた。

 

 他方、イランホドロ、サイパという国営2大自動車メーカー傘下の部品企業をはじめ、イラン国内の自動車部品企業も多数出展しており、イラン自動車関連産業の厚みがうかがえた。イラン企業が展示した自動車部品は、シートなどのインテリア部品やエンジン関連部品からアフターケア用品まで多岐にわたっていた。イランの自動車部品メーカーは1,200社前後とのことで、制裁下で稼働していないところもあるが、800社前後は操業を続けているとのことだ。

(遠藤壮一郎、中村志信)

(イラン)

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