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域内共通の知財権の管理・保護に向け調整-ロシア・ユーラシア経済連合知的財産セミナー(1)-

(ベラルーシ、ロシア、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

欧州ロシアCIS課

2015年11月13日

 ジェトロは9月16日、ユーラシア経済委員会とロシアの弁護士事務所の専門家を招き、ロシア・ユーラシア経済連合知的財産権セミナーを東京で開催した。概要を4回に分けて報告する。1回目はユーラシア経済連合(EEU)の知財権法制の現状について。ユーラシア経済委員会は、域内の知的財産権管理の一元化や、協調した権利保護活動に向けて調整を行っている。

<経済委員会が知財戦略を策定>

 ユーラシア経済委員会(以下、経済委員会)のサマット・アリエフ企業活動振興局副局長がEEUの知財関連法規を整備する経済委員会の役割と位置付けを説明した。

 

 ユーラシア経済連合条約は2014年にベラルーシ、ロシア、カザフスタン3ヵ国間で締結され、201511日に発効した。12日にはアルメニアが、82日にはキルギスがEEUに加盟し現在の加盟国は5ヵ国だ。EEUの核となるのは関税同盟であり、次の段階として財、サービス、資本、労働力の移動など、17の分野で共通した政策をとることを目指している。

 

 加盟国が調和した行動を取るために、国家を超えた恒久的な統治機関として経済委員会が設置されている。経済委員会の決定には全加盟国の総意を必要とし、加盟国はこの決定事項を遂行する義務を負っている。経済委員会は平等な権利を持つ12人の理事からなる理事会と、その上部組織として各加盟国から副首相が1人ずつ参加する評議会からなっている。さらにその上部機関が各国首相からなるユーラシア政府間協議会、その上部が各国の国家元首(大統領)からなる最高ユーラシア経済評議会だ。

 

 知的財産権については、並行輸入や権利の消尽などの問題について超国家的な部分と国家的な部分との調整が必要で、その検討が経済委員会に委ねられている。現在、商標権や原産地証明などについてEEUの統一税関登録簿の整備が焦眉の課題だ。

 

 理事会の下に加盟国の関連省庁の次官級レベルで構成される諮問委員会と、第1副首相レベルが参加する消尽に関する作業部会が設けられている。消尽については国際消尽から国内消尽までのどこに力点を置くべきかでさまざまな議論が行われている最中だ。分野によっては社会的需要が高い、価格が高い、域内で製造されていない、などの製品については域内消尽ではなく国際消尽として認めるべきとの暫定合意が副首相レベルでなされ、対象品目のリストの作成作業が行われている。

 

 加盟国間で知的財産の保護には温度差があるが、EEU域内で知的財産権の保護、権利行使、効果的な利用を各国で均等に行うため、経済委員会は加盟国の知的財産の発展レベルを分析し、国ごとの特性や発展レベルに応じて具体的なロードマップを戦略として提言する。

 

<登録簡素化や統一登録簿の整備実現を模索>

 エレーナ・イズマイロワ企業活動振興局知的財産権法的保護課長が、ユーラシア経済委員会で作成している知的財産権に関する4件の協定や条約案について次のとおり説明した。

 

1)著作権・著作隣接権の集中管理に関する協定案:権利を集中管理することにより、権利所有者の正当な利益を守り創作活動を保護するため、各国間で協調的な仕組みを作ることが協定の目的だ。加盟国間の法令の基本条項を統一し、権利の集中管理機関(OCMC)の活動の透明性を確保するためにOCMCの説明責任を義務付け、報酬の徴収、分配、支払いに関する報告と監査を規定している。また、徴収し過ぎたり一定期間内に権利所有者に渡すことができない報酬を留保し、社会的・人道的・文化的創作活動に利用するためのルールやこの報酬を繰り入れる特別ファンドの創設も規定している。この協定は署名の最終段階にある。

 

2)商標、標識および原産地名称に関する条約案:この条約は、登録コストの削減や窓口の一本化を望むビジネス界からの要望を受けて策定されるもので、効果的な保護が受けられ、行政面からの妨害や阻害要因を取り除くことを目的としている。加盟国内での登録と併せて、他の全ての加盟国内に同時に商標登録することを可能にする登録簿を作成する。手続きとして、権利所有者は各国の特許庁の申請窓口で1回登録料を支払い、主管官庁での審査が通れば統一登録簿に記載され、他の加盟国での登録も完了となる。期間も方式審査から登録証の交付まで8ヵ月強で加盟国全体の登録が終了する。

 

3)知的財産権行使のための協調に関する条約案:この案は98日にベラルーシのグロドノ市で調印されたもので経済委員会の活動の大きな成果だ。域内への模倣品の流入を防ぐために各国間で異なる関係省庁の機能や役割について法制度の調和と改善を図ることを目的とし、相互協力のための情報交換やセミナーの開催などを行うことを規定している。

 

4)関税同盟加盟国の知的財産権の統一税関登録簿に関する協定の改正議定書案:2010521日付で署名された協定を効果的に実施するために策定しているもの。各国間で未調整な部分が多く、また、各国の税関が登録簿を受け付けるための能力を十分に持っていない状況にあり、統一登録簿がまだ機能していない。そこで、統一税関登録簿の管理資格をロシア税関から経済委員会に移行させること、各国の税関相互に情報を共有するとともに公開すること、登録申請を電子媒体で行えるようにするなど作業の自動化と単純化を図ること、などを規定している。

 

芝元英一

(ベラルーシ、ロシア、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

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