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特許出願には十分な情報開示が必要に-ロシア・ユーラシア経済連合知的財産セミナー(2)-

(ロシア、CIS)

欧州ロシアCIS課

2015年11月16日

 ロシア・ユーラシア経済連合知的財産セミナー報告の2回目。ロシアの知財専門家が、CISおよびロシアにおける特許保護制度の現状について解説した。ロシアでは2014年10月に民法第4部が改正され、特許出願の際に十分な情報開示が求められるようになった。実用新案については審査内容や保護範囲が変更され、出願は勧められないという。

<知財当局長官に交代の動き>

 ロシアの弁護士事務所ゴロジスキー&パートナーズのパートナー、セルゲイ・ドロフェエフ氏による講演概要は以下のとおり。

 

 CISの知財当局に相当するユーラシア特許庁のトップが変わる。次期長官には、カザフスタン出身のサウレ・トレウレソワ氏が6月に選出された(任期は2016211日から6年間)。同氏はカザフスタンのナザルバエフ大統領顧問の経験があり、世界知的所有権機関(WIPO)での勤務も経験している。

 

 ユーラシア特許庁は、1995812日に発効したユーラシア特許条約に基づく組織で、CIS諸国のうち8ヵ国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン)が加盟する。使用言語はロシア語で、域内で有効となる統一特許を付与する。

 

<ユーラシア特許条約は欧州より先進的>

 ユーラシア特許条約第13条に基づき、ユーラシア特許が侵害された場合、各加盟国は自国の国内特許が侵害された場合と同様の扱いをすることになっており、これは欧州の同様の制度と比べて先進的といえる。

 

 2015年に発足したユーラシア経済連合では、知財保護原則が定められている。この原則は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)の原則やWIPOの枠組み内で締結された国際条約に基づいている。商標権の消尽は地域消尽の原則、特許は各国内で消尽する原則を取っている。

 

 ロシアの連邦知的財産局の長官には、731日にグリゴリー・イブリエフ氏が就任した。同氏の前職は文化省次官で、担当分野はインターネットや国際ライセンスだった。2011年に知的財産権関係機関を統合して、連邦知的財産局が誕生した。著作権の所管を文化省から移す動きがあるため、同氏がその役割を担うとみられている。

 

<特許出願後のデータ補正には制限>

 ロシアは1970年にWIPO2012年にWTOに加盟した。意匠の国際登録に関するハーグ協定への加盟も準備中だ。2014年に民法第4部が改正され、同年10月から施行された。施行日以降に出願された特許は、新制度の下で審査される。

 

 改正によって、他の先進国の特許庁の実務に合わせ、出願の際に情報開示が十分かどうか重視される。実施例が十分に示されており、信頼性のある情報となっているか、発明の目的が明確で、特許が技術的に実現可能か、を示す実験データも必要となる場合がある。

 

 出願の際に作成する特許の明細書に、全ての実験データや資料を記載することが求められる。出願後の補正には制限があり、出願人による自発補正は1回のみ可能だ。しかし、出願になかった新たな技術的結果や発明の単一性要件を超えるものについては受理されなくなった。

 

 実用新案においても大きな改正が行われた。これまで実用新案は、特許よりも安価で早く権利を取得できた。審査は方式審査で、登録の要件も少なかった。改正により、特許性も含む実体審査となり、新規制も求められるようになった。均等論(注)が適用されなくなり、保護可能な対象が小さくなる。従って基本的には、特許による保護が得られない場合など条件が伴わない限り、ロシアで実用新案権を登録することはお勧めしない。

 

 ロシアでの特許の出願から権利付与までの平均的な期間は1624ヵ月。ユーラシア特許庁での出願の場合は1012ヵ月かかる。ロシアでの出願は時間がかかるが、費用は安い。ユーラシア特許条約加盟8ヵ国で出願するのであれば、国ごとに行うよりもユーラシア特許庁を通じて出願した方が費用は安い。

 

(注)既に権利化された技術の内容と、ある技術の内容とが一部異なっていたとしても、同一の効果作用を奏するなどの要件を満たすことで、同じ技術的範囲内にあるものと評価する理論。

 

(浅元薫哉)

(ロシア、CIS)

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