TPPを契機とした連携の強化に期待-日越経済フォーラム(1)-

(ベトナム)

ハノイ事務所

2015年10月30日

 ジェトロは10月14日、ベトナム商工会議所(VCCI)と共催で「日越経済フォーラム2015」をハノイ市で開催した。本フォーラムは、2013年9月に開催された「日越経済サミット」に続くもので、2国間の経済連携の強化を図ることを目的としている。午前は基調講演とパネルディスカッションが行われ、午後は農業分野と国有企業改革に関する2つの分科会で議論が交わされた。出席者は、両国の政府関係者や企業関係者ら合わせて約250人。同フォーラムの内容を4回に分けて報告する。1回目は基調講演について。

<双方が交流の深化を強調>

 フォーラムの冒頭、VCCIのブー・ティエン・ロック会頭が主催者を代表してあいさつした。105日に大筋合意した環太平洋パートナーシップ(TPP)を契機として日越間の交流はより深化する、と述べた上で、裾野産業や農業分野のほか、安全・安心な食品加工・生産、観光、インフラ整備などに対する日本の協力に期待感を示した。

 

 次に、ジェトロの佐藤百合理事が講演し、ベトナムの経済発展に向けて、裾野産業の発展、中小企業の育成、農業ビジネスの強化が重要なことを指摘。ハノイ、ホーチミン両市での部品調達展示商談会の開催や、農業分野における日本企業とのビジネス交流会・商談会の取り組みなどを通じて、ベトナムの経済成長と日越経済関係のさらなる深化に向けて一層努力する意向を示した。

 

<コア産業への重点的な資源投入を指摘>

 続いて登壇した深田博史駐ベトナム大使は、TPPをはじめとする自由貿易の拡大がベトナムにとって輸出拡大の大きなチャンスとなる一方、公平で公正なビジネス環境創出のために一層の改革が求められる、とした。また、ベトナムの経済成長に必要な要素として、縫製分野、農業分野、IT分野などのコア産業を見極め、重点的に政策資源を投入することの重要性と、外国企業の誘致に加え、地場企業の育成や国有企業改革などの大切さを訴えた。

 

 さらに、経団連の日越経済委員長の代理として、昭和電工レアアースベトナムの香椎裕希彦社長が、日越共同イニシアチブや政府との政策対話のほか、奨学金提供や幹部候補生との交流を通じて、今後も両国間の経済連携強化に向け積極的に取り組んでいきたい、と述べた。

 

<農業、裾野産業、ハイテク分野での発展に期待示す>

 ベトナム外務省のブー・クアン・ミン大臣補佐官は、日本は極めて重要な経済パートナーで、ASEAN経済共同体(AEC)やTPPの発足は日越間の経済協力にとって大きなチャンスになる、と期待感を寄せた。

 

 ベトコムバンクのファム・タイン・ハー副会長は、同行内のジャパンデスクの設置や、邦銀60行との協力覚書締結など、日本企業支援の取り組みを紹介した。

 

 最後に、ホアン・チュン・ハイ副首相が、TPP加盟により農業、裾野産業、ハイテク分野での発展が期待されるとの考えを示し、ベトナムの投資環境を改善し、日本企業にとって魅力的な投資先となるよう政府として努力を続けたい、と述べた。

 

荒井拓也

(ベトナム)

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