日本が対米輸出で課される関税は23億ドル、平均関税率は3.0%

(米国、日本)

米州課

2015年10月23日

 日本は対米輸出でどれだけの関税額を課されているのか、米国の輸入統計からみると、2014年の関税額は23億ドルで、このうち約半分は自動車・同部品に対するものだ。全品目をならせば、課税対象額に対し課されている関税率は3.0%となる。中でも、繊維や一部の鉱物には10%を超える関税が課されている。

<日本に課す関税の半分は自動車・同部品>

 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉が大筋合意に至り、各品目の関税撤廃スケジュールに関心が集まっている。どの品目が関税撤廃されるかの議論は別として、現在、日本が対米輸出で課されている関税率は幾らか。関税率は、制度として通常貿易関係(NTR)にある国に対しては同じだが、無税品目を多く輸出しているか、高関税品目を多く輸出しているかのウエートにより、課される平均関税率は国や年ごとで異なる。高関税品目が多い貿易相手国があっても、それらの品目を輸出していなければ、高関税に悩まされることにはならない。

 

 本稿では、米国の輸入統計(2014年)から算定関税額を取り出し、それを課税対象額で割ることで、平均関税率を計算した。また品目ごとの特徴をみるため、HS2桁に区切って分析を行った。米国の対日輸入(日本の対米輸出)では、日米間に自由貿易協定(FTA)や特恵協定がないため、一般税率が課されることとなる。まず、課されている関税額は表のとおり。

 算定関税額は23億ドルで、ほぼ半分に相当する11億ドルは87類(自動車・同部品)で課されている。輸入額としては84類(一般機械)プラス85類(電気機器)が87類にほぼ等しい規模だが、前者は無税の品目もある中で、後者は税率2.5%の品目が多いことから、算定関税額は87類が2倍の規模となる。

 

<関税率が高い繊維製品分野>

 タリフライン(関税品目)の中には、有税もあれば無税品目もある。例えば87類では、完成車が2.5%、トラックは25%、自動車部品は無税と2.5%が混ざっている。極端に言えば、平均関税率はトラックのみを輸入していれば25%となり、完成車のみ輸入していれば2.5%となる。これらが入り混じっている中での加重平均として平均関税率がある。

 

 米国の対日輸入額(2014年)は1,331億ドルで、課税対象額は776億ドル、算定関税額は23億ドルだ。この2つから計算すると、対日輸入全体に対する平均関税率は3.0%となる。全体では3.0%となるものの、HS2桁ごとに分けると図1のとおりとなり、ばらつきがある。

 グラフの山が最も高いのは6064類(繊維製品や履物)で、米国として以前からのセンシティブ品目だ。次に高い51類(羊毛)も、一部品目の関税が25%となっていることから平均関税率が14.8%と高い。また、81類(卑金属)に14.0%に近い山がみられるが、これは8108.20(チタン)の一般税率が15%と高いことによるもの。81類の対日輸入実績は19,798万ドルとなっている。

 

 農水産物は、07類(野菜)が6.8%と高いが、これは0709.59(その他のきのこ)の税率が1キロ当たり8.8セント+20%、0714.30(ヤムイモ:ナガイモなど)に6.4%が課されていることによる。また、1621類の加工食品も6.07.0%と平均関税率が高いものが並ぶ。例としては、1904(穀物の調製品)に一部14%、2105(アイスクリーム)に20%、2103.90(その他のソース:テリヤキソースなど)と2106.90(乳製品由来のその他の調製品)に6.4%が課されている。

 

 一方で、30類(医薬品)、31類(肥料)、47類(木材・パルプ)、48類(紙)など、関税を課されていない類もある。また対日輸入の主要品目で、金額としては合計で全関税額の7割を占める84類、85類、87類はそれぞれ、3.4%、2.7%、2.5%と、全体平均の3.0%とそれほど変わらない。

 

<主要貿易品目の特徴が表れる各国の平均関税率>

 TPPが大筋合意に至った今、気になるのは他国が米国から課されている関税だ。米国の、TPP参加国からの輸入における平均関税率は図2のとおり。

 国ごとの数字の高低は、主要貿易品目が何かによるところが大きい。一般特恵関税制度(GSP)の対象国ではなく、繊維製品を中心にほぼ全品目に一般税率が課されているベトナムは13.9%となっている。シンガポールは化学品の占める割合が高く、これらの品目に5%前後の関税が課せられていることから5.6%とやや高い。2014年は修理目的の船舶輸入にかかる高関税(9818.00.0750%)が影響した特殊要因があり、2013年は4.6%だった。ただ化学品においては、米・シンガポールFTAを使うことにより無税で輸入されている製品も多くある(注)。

 

 ニュージーランドは1.5%と低く、一般に関税が高い農水産物が輸入の半分以上を占める中で意外にも取れるが、これは関税割当制度の中で、低税率が適用される枠内に輸入量がとどまっているためだ。牛肉(冷凍)がほぼ4分の1を占め、輸入量がWTOに基づく関税割当制度(ニュージーランドに対しては213,402トン)の枠内に収まっていることが、平均関税率を押し下げている。枠内の税率は1キロ当たり4.4セントで、従価税に換算すると12%となる。枠外は26.4%が税率になるが、輸入実績はない。乳製品も同様の構造にある。

 

(注)国際貿易委員会(ITC)のデータの特性上、FTA利用であれNTR無税品目であれ、関税がかからないイコール課税対象額はゼロ、との考え方になっている。分子のみならず分母もゼロとなり、平均関税率の計算には含まれないこととなり、平均関税率を下げる方向に寄与しない。例えばFTAが発効して関税撤廃が進んでも、仮に高関税品目の関税が残り、低関税品目の関税ばかりが撤廃された場合、平均関税率はむしろ上がる可能性がある。

 

(山田良平)

(米国、日本)

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