開城工業団地の最低賃金、2015年は5%引き上げ
(韓国、北朝鮮)
中国北アジア課
2015年10月22日
開城(ケソン)工業団地の北朝鮮従業員に対する2015年の最低賃金が前年比5.0%の引き上げで決着していたことが、韓国統一部が8月26日に発表した「開城工業団地関連主要消息」で明らかになった。引き上げ率は北朝鮮側の要求に達しなかったものの、社会保険料は職種や職制、勤続年数加給金を労賃に含めて計算することとなり、入居企業の人件費負担増が予想される。
<3月分からの実施で合意>
2015年の最低賃金引き上げ交渉は、2014年11月に北朝鮮側が開城工業団地の労働規定を改定し、最低賃金を70.35ドルから74ドルに5.18%引き上げると一方的に通告、2015年3月からこの引き上げ率での支払いを韓国側に求めていたが、韓国側はこれに応じず交渉が始まった。5月22日に韓国側の開城工業団地管理委員会と北朝鮮側の中央特区開発指導総局は、3月から5月までの賃金は従来の最低賃金の基準で支払い、北朝鮮側が主張する最低賃金との差額や延滞料は今後の協議の結果に基づいて支払うことで合意した。
統一部が8月26日に明らかにした「開城工業団地、最低賃金などに関連した合意内容」によると、8月17日の交渉で、最低賃金を70.35ドルから5.0%引き上げて73.87ドルとし、2015年3月分から実施することにした。北朝鮮の主張との差額は南北共同委員会で協議することで合意した。また、社会保険料は、職種・職制・勤続年数加給金を労賃に含めて計算することとし、2015年3月分の保険料にさかのぼって支払うこととした。最低賃金の引き上げ率が5%にとどまったのは北朝鮮の譲歩だが、北朝鮮側は社会保険料の算定基準を変更させたことで実利を得たとみることもできる。
<入居企業の人件費が8~10%上昇との報道も>
中央日報(8月19日電子版)は開城工業団地企業協会関係者の言葉を引用し、「最低賃金の5%引き上げに社会保険料の増加分も加えると、入居企業の人件費は8~10%上昇する」としている。
開城工業団地の賃金引き上げ問題は例年8月に実施されてきたが、2013年は4月から半年近くの操業中断があったことで交渉も途切れていた。2014年2月に北朝鮮側は、3月と8月の年2回の最低賃金引き上げを要求してきたが、韓国側は年2度の引き上げには応じることはできないと強く主張し、交渉は難航した。その後、双方が歩み寄り、2014年の引き上げ率は5%とするものの、引き上げ時期を従来の8月から3ヵ月前倒しして5月分からとすることで、ようやく6月初めに合意した(2014年6月19日記事参照)。
<2015年の生産額は2桁の伸び率の見通し>
韓国と北朝鮮の合意に基づき2004年から生産が始まった工業団地の生産額は2014年に4億6,997万ドルと過去最高を記録し、2015年も順調に推移している。統一部によると、1~6月の生産額は2億7,815万ドルで、このまま推移すれば通年で約5億4,000万ドルと、前年比で2桁の伸び率になる見通しだ。
開城工業団地で働く従業員は2014年末現在、韓国側が815人、北朝鮮側が5万3,947人だったが、2015年6月末では、韓国側が803人とほとんど変化がないのに対し、北朝鮮側は400人程度増えた。
<開城工業団地では韓国側関係者も新標準時を使用>
なお、統一部によると、北朝鮮側は、8月15日から開城工業団地に出入りする韓国側関係者も新しく変更する標準時(現在より30分遅い東経127度30分を基準とする時間)に合わせるように要請してきた。実質的には8月17日から、韓国人関係者の出入り時間や入居企業の業務開始時間が変更されている。
(根本光幸)
(韓国、北朝鮮)
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