開城工業団地の最低賃金を5月分から70.35ドルに引き上げ

(韓国、北朝鮮)

中国北アジア課

2014年06月19日

韓国統一部は、南北間の経済協力の象徴とされる開城(ケソン)工業団地運営事業に関し、2014年の北朝鮮労働者の最低賃金交渉が妥結し、例年の8月から3ヵ月早めて5月から引き上げを実施することになったと発表した。交渉は双方が譲歩したことで合意に達したとされる。

<3ヵ月前倒して5%引き上げ>
統一部の金義道(キム・ウィド)報道官は6月9日の定例記者会見で、開城工業団地(注)で働く北朝鮮労働者の最低賃金交渉が妥結し、6月末に支給される5月分の給与から、5%引き上げられた70.35ドルが適用されることを明らかにした。

統一部は本件を定例記者会見で明らかにしたものの、報道資料としては公開していない。「毎日経済新聞」(6月10日)によると、開城工業団地の北朝鮮労働者の最低賃金は操業が開始された2004年末から2006年までは、南北協議により50ドルに制限されていたが、2007年から2012年までは毎年5%ずつ引き上げられてきたという。

2013年は北朝鮮側の一方的措置により、4月から9月半ばまで5ヵ月以上開城工業団地の操業が中断したために、同団地の北朝鮮労働者に対する最低賃金の引き上げ交渉も中断していた(2013年8月27日記事9月20日記事参照)。

<北朝鮮側は3月と8月の2回の賃上げを要求>
北朝鮮側は、操業中断により2013年の賃金引き上げができなかったために、2014年2月ごろから、北朝鮮側労働者の賃金引き上げをめぐって、韓国側への働き掛けを活発化させた。

統一部は3月21日の定例記者会見で、「開城工業団地を管理する北朝鮮側窓口の中央特区開発指導局は、北朝鮮の労働者の賃金が毎年5%ずつ引き上げられてきたことを理由に、3月と8月にそれぞれ5%ずつ引き上げることを提案してきたが、韓国側は年2度にわたる賃金引き上げ要求には応じられないとし、例年どおり7月に賃金交渉を行うべきと逆提案した」ことを明らかにした。

当初は双方の主張に大きな隔たりがあったものの徐々に歩み寄り、最終的には韓国側としては、北朝鮮側の年2度にわたる賃金引き上げ要求には応じなかったものの、例年8月だった実施時期を3ヵ月前倒し5月から実施することで北朝鮮の立場にも配慮したと「聯合ニュース」(6月9日)や「毎日経済新聞」(6月10日)は報じている。

開城工業団地では現在5万2,000人を超える北朝鮮労働者が123の韓国企業に勤務し、最低賃金のほか、休日特別勤務手当や平日夜間勤務手当などが別途支給されている。これに社会保険なども含めると、1人当たり月平均で135〜150ドル程度が支給されているとされる。

<ドイツ企業が開城工業団地進出との報道>
また、「聯合ニュース」(6月10日)は統一部当局者の話として、「ドイツ企業が開城工業団地に営業所設置の申請をした」と報じた。このドイツ企業はグロッツ・ベッケルトといい、製造業ではないが、同団地に進出した衣類や靴のメーカーに針を販売する計画という。韓国政府は開城工業団地の国際化を推進しており、報道が事実ならば、これが呼び水となってさらに外国企業の進出の動きが出てくるのではないかと注目される。

(注)開城工業団地は、南北経済協力の象徴として、2000年に北朝鮮の開城市とその周辺地域に造成されることが決まり、入居した韓国企業によって2004年末から生産が開始された。その後、順調に推移していたが、北朝鮮の一方的措置により2013年4月から9月まで操業が中断された。現在は韓国の123社が生産に従事し、ほぼ正常に戻っている。

(根本光幸)

(韓国・北朝鮮)

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