地域経済連携に対しオープンな立場を表明-TPP大筋合意への政府の反応-

(中国)

北京事務所

2015年10月14日

 環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉の大筋合意を受け、商務部や外交部の報道官はコメントを発表した。TPP協定を含めた地域経済連携に対して、中国はオープンな立場にあり、今回の大筋合意で、各種連携の推進に弾みがつくと期待していることを示した。

TPPは重要なFTAの1つと評価>

 105日まで米国アトランタで開催されたTPP交渉の閣僚会合で、参加12ヵ国が大筋合意に達したが、商務部の報道官は同日コメントを求められた際、「TPPは当面、アジア太平洋地域において、1つの重要な自由貿易協定(FTA)だ。中国はWTOの規定に合致し、アジア太平洋地域の経済統合を促すような制度の建設に対しオープンな立場を保ち、TPPと本地域のその他のFTAとが相互に発展を促進し、共にアジア太平洋地域の貿易投資と経済発展へ貢献していくことを希望する」と述べた。

 

 これまで同様に、地域の経済連携と共同発展を促進するあらゆるフレームワークに対しオープンな立場であることを強調しつつ、TPPがアジア太平洋地域における重要な協定である点に触れた。

 

 外交部の報道官も108日の定例記者会見で記者の質問に回答した際、「中国はアジア太平洋の経済統合を促す地域貿易協定に対しオープンな立場を保ち、関連する各種貿易協定がWTOの規定を順守すべきで、多角的貿易体制の強化、ドーハ・ラウンド交渉、グローバル開発アジェンダの推進に寄与すべきだ」とした。

 

 さらに、「各種FTAは互いに推進し合うものでなければならない。中国は地域各国とともに、相互信頼、包容、協力、ウィン・ウィンの精神で、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けた作業を積極的に推進し、オープンなアジア太平洋経済枠組みを築き、世界経済の健全な発展に新たな原動力を注入するため積極的に取り組んでいる」と、中国の参画する地域経済連携も含めて推進に弾みがつくと期待を示した。

 

<貿易への影響で強弱両方の見方>

 中国内のメディアでは、TPPによる貿易への影響を懸念する報道がみられる。TPP協定が発効した場合に、加盟国間では低関税、もしくはゼロ関税政策が実施され、中国の対外貿易に一定の影響を及ぼすとするものだ。その一方で、影響は限定的との見方もある。

 

 国家発展改革委員会対外経済研究所国際経済合作室の張建平主任は「中国は現在、世界最大の物品貿易国になっており、世界市場におけるシェアは12.0%に達した。中国はTPP3分の2の加盟国とは2国間FTAを締結した。ある程度はTPPがもたらすマイナスの影響を相殺することができる。さらに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にはASEAN10ヵ国、中国、日本、韓国、オーストラリア、シンガポール、インドの16ヵ国が含まれており、この巨大な自由貿易区を設立できれば、一定程度はTPPがもたらす中国貿易への影響などを相殺することもできる」としている(証券時報108日)。

 

 また、TPPの大筋合意を受けて、中国の進める経済連携の加速の必要性を指摘する声も多い。中国現代国際関係研究院米国研究所経済研究室の余翔主任は「外部からのチャレンジに対応するため、中国自身の発展と経済構造の調整を速めることや、より開放された市場経済をつくり、2国間と多国間のFTA交渉を積極的に推進することが必要だ」としている(人民網107日)。

 

 中国国際問題研究院の阮宗澤副院長は「第1に、われわれは世界の十数ヵ国と既にFTAを締結あるいは交渉中だが、引き続き2国間、多国間のFTAを推進し、複雑な影響に対応する能力を高めるべきだ。第2に、FTAAPの実現に向けた交渉を加速すべきだ。当地域にはTPPRCEPASEAN1FTAなどがあるので、FTAAPという大きな枠組みでこれらのメカニズムを統合する。これがアジア太平洋地域の経済統合発展の最も重要な方向だ」と、将来的にはより大きな枠組みであるFTAAPを実現することの重要性に言及している(国際在線108日)。

 

 TPPの各国内での批准には一定の時間を要するとみられるが、今回の大筋合意を受けて、今後、中国は経済連携の推進にこれまで以上に積極的に取り組んでいくと思われる。

 

(宗金建志)

(中国)

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