10月からATIGA自己証明制度を実施-第2パイロットプロジェクト、利用は限定的と予想-
(ベトナム)
ハノイ事務所
2015年09月08日
商工省は8月26日、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)原産地証明書(C/O)「フォームD」の自己証明制度を10月5日から実施すると発表した(8月20日付同省通達28/2015/TT-BCT号)。ベトナムは第2パイロットプロジェクト(SC2)を選択しているが、第三国インボイス(リインボイス)の利用ができない上に、前年のC/O「フォームD」発給額が1,000万ドル以上という条件となっており、利用は限定的になるものと予想される。
<自己証明制度は世界的トレンド>
現在、ベトナムでのC/Oの発給は商工省輸出入庁が所管している。自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)に関するC/Oの発給は、商工省の出先機関である輸出入管理課および同省に委託された工業団地管理局(ATIGA C/O「フォームD」のみ)が行う。それ以外の一般特恵関税(GSP)、「欧州向けフォームA」、「フォームB」などのC/O発給については、同省がベトナム商工会議所に委託しており、これらは「第三者証明」と呼ばれている。
今回当地で開始される自己証明制度は、第三者から「フォームD」の発給を受ける代わりに、輸出者自身がインボイスなどで原産性を申告し、輸入国側でATIGA税率の適用を認めるものだ。C/O発給までの待機時間短縮などのメリットがある。商工省関係者は「自己証明制度の動きはATIGAに限らず、交渉中の環太平洋パートナーシップ(TPP)などにおいても議論され、世界のトレンドとなっている」としている。
<企業には高いハードル>
ASEANの自己証明制度は第1パイロットプロジェクト(SC1)とSC2からなる(2013年11月5日記事参照)。ベトナムはSC2での参加となり、同じく参加しているラオス、フィリピン、インドネシア、タイ向けの利用のみとなる上、第三国が発行するリインボイスの利用ができないなど、SC1より制約が多い。ベトナムにおける具体的な自己証明制度の利用条件は次のとおり。
(1)生産者であると同時に、生産品の輸出者であること
(2)登録申請時から2年間、原産地に関する規定に違反していないこと
(3)前年にASEAN向け輸出でC/O「フォームD」発給額が1,000万ドル以上あること
(4)商工省が指定した機関で原産地証明書発給に関して研修を受けているスタッフがいること
上記の条件を満たした事業者は、所管する商工省輸出入庁へ自己証明書利用の申請ができる(申請フォームは同通達に規定)。同庁は事業者コードと品目リストを記載した同意書を発給する。有効期間は1年となっている。
リインボイスの利用ができないだけでなく、前年のC/O「フォームD」発給額が1,000万ドル以上という条件は企業にとって高いハードルとなる。商工省関係者はこの理由として、「自己証明制度を利用したC/Oの偽造が増える可能性があるため」と説明しており、限定的な運用にとどめたい意向だ。
<日系企業にも利用は困難>
進出日系企業にとっても、SC2の利用は困難だ。大手メーカーからも「前年のC/O「フォームD」発給額が条件に到達しているか微妙だ」という声が聞こえる。またASEAN向けの場合、商流はシンガポールを経由してリインボイスを利用する進出日系企業も多い。2014年6月にフィリピンのマニラで開催された第7回「ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)とASEAN事務総長との対話」においては、ベトナム日本商工会(JBAV)がSC1での運用を要望していた(2014年7月3日記事参照)。今後、自己証明制度が多くの企業に利用されるようになるのか注目される。
(佐藤進)
(ベトナム)
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