法定最低賃金、2016年1月の引き上げは月額700コルナ

(チェコ)

プラハ事務所

2015年09月29日

 9月14日にチェコの法定最低賃金に関する政令が公布された。これにより、2016年1月1日から最低賃金(月額)が9,200コルナ(約4万5,080円、1コルナ=約4.9円)から9,900コルナに引き上げられる。1時間当たりでは55コルナから58.70コルナになる。

2016年には平均賃金の36%に上昇へ>

 ソボトカ内閣は綱領の中で、最低賃金を平均賃金の40%に近づけることを目指して引き上げを実施することを約束している。

 

 最低賃金が導入された1991年当時、平均賃金に対する割合は52.7%だった(表1参照)。その後、この割合は平均賃金の急上昇により次第に下がり、1998年には22.5%まで落ち込んだ。2000年以降は中道左派政権下で上昇し、2006年には40%を超えたが、20071月以降は6年半もの間、中道右派政権下で最低賃金が8,000コルナに凍結され、2012年には平均賃金の31.9%に低下した。2013年には当時のテクノクラート内閣が最低賃金を500コルナ引き上げ、また平均賃金が前年比で0.1%減少したため、最低賃金の割合は34.0%に上昇した。しかし、2014年は平均賃金上昇率が2.3%に回復したため、最低賃金の割合は33.2%にとどまっている。

 

 ソボトカ内閣は20151月付で最低賃金を700コルナ引き上げており、最低賃金の平均賃金に対する割合は34.8%に上昇した2014107記事参照)。労働・社会福祉省は、今回の700コルナの引き上げにより、2016年には最低賃金は平均賃金の36.0%になると見込んでいる。

 

<労組は引き上げ額に不満>

 ボヘミア・モラビア労働組合連合(各労働組合の全国統合組織)は、内閣に対し最低賃金の平均賃金比40%の早期達成を求め、2016年からの引き上げ額を700コルナではなく、1,000コルナにするよう要求していた。労組は特に、チェコの最低賃金がスロバキアやポーランドより低いとし、少なくともこの2ヵ国のレベルに達するよう引き上げるべきだ、と主張していた(表2参照)。

 

<企業は国際競争力の低下を危惧>

 チェコ経済会議所によると、会員企業の約70%が最低賃金700コルナ引き上げに不満を表明し、その理由として、賃金コスト上昇による国際競争力の低下を挙げている。また、労働者の解雇や業務の一部終了を余儀なくされる可能性などにも言及している。同会議所のアンケートでは、最も適当な最低賃金引き上げ額は400コルナとの結果が出ているという。

 

 また、雇用者代表の団体である産業連盟は、引き上げ額を500コルナに制限するよう主張していた。国内の全部門の企業が良好な業績を挙げていない時期に、過度な最低賃金引き上げを断行し、賃金上昇圧力を高めることは不適切だ、と指摘している。

 

 産業連盟はさらに、最低賃金問題が政治によって左右されるべきでないと強調し、国内産業の業績を基に最低賃金が自動的に調整される制度の創設を呼び掛けている。こうした制度が導入されれば、今回のように内閣の判断で大幅引き上げが決定されることはなく、企業にとっても賃金コストの予測がつきやすくなる、と主張している。これに関しては、内閣および労組も基本的に反対の立場は取っておらず、話し合いの余地があるとしており、今後の3者会議の焦点の1つとなることも予想される。

 

(中川圭子)

 

(チェコ)

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