水産物や野菜・果物にビジネスチャンス-ホーチミンの日本産農水産物・食品輸出商談会(1)-

(ベトナム)

ホーチミン事務所

2015年08月14日

 ジェトロ主催の「日本産農水産物・食品輸出商談会inベトナム(ホーチミン)」が7月29、30日で開催され、1日目に現地企業訪問、2日目に市場視察と商談会が行われた。イベントの内容を2回に分けて報告する。前編は現地企業(クローバートレーディングとビンマート)訪問について取り上げる。日本の食材は、和牛、抹茶などが既に高く評価され、ビジネスチャンスという観点では水産物や野菜・果物に可能性がありそうだ。

<和牛、抹茶に高い人気>

 最初に訪問したクローバートレーディングでは、ディン・ビン・クオン社長が取り組み事業を紹介した。

 

 クオン社長によると、同社は現在、(1)日本を中心に食材などの輸入、(2)輸入した食材などを販売する「TOKYOMART」の運営、(3)日本食レストラン「神戸BBQ」の運営、(4)ベトナム料理レストランの運営、(5)ロジスティクス、(6)不動産、(7)盆栽(万年松)、の7事業を展開している。輸入した日本の食材などを、TOKYOMARTで販売、または神戸BBQで提供している。神戸牛は20146月から輸入している。

 

 参加企業からの主な質問、およびクオン社長の回答は以下のとおり。

 

問:なぜ神戸牛を取り扱っているのか。他の和牛は選択肢になかったのか。

 

答:ベトナム人が和牛イコール神戸牛のイメージを持っていることから、神戸牛を選んだ。神戸牛は1キロ当たり900ドルと高価だが、売り上げは好調だ。

 

問:加工食品の輸入に当たり消費期限の目安は。

 

答:輸入手続きに時間を要することがあるため、消費期限は長い方がよい。例えば消費期限3ヵ月の商品を輸入しようとすると、輸入手続きに2ヵ月かかり、市場に出回るころには消費期限が残り1ヵ月を切ってしまうことがある。消費期限が近づいた商品は割引をするなどして対応している。

 

問:メーンとしている商品は。

 

答:茶や菓子が取扱商品のシェアの半分を占める。茶の中でも、抹茶に対するベトナム人の関心は非常に高い。食材では牛肉や果物、食材以外では焼き物をメーンとしている。ベトナムでは「メード・イン・チャイナ」に対する抵抗感が強いため、当社では中国製の商品は買わないようにしている。

 

問:日本の水産物のニーズはあるか。

 

答:日本食レストランなどでニーズはある。ベトナム人はシーフードが好きなので、日本の水産物も受け入れられると思う。ただ、行政手続きが整備されていない点や、コールドチェーンが整っていない点など輸入への障害がある。

<新鮮野菜・果物を提供する小売店を展開>

 ビンマート(VinMart)は、国内大手デベロッパーのビングループが2014年に設立した子会社だ。スーパーマーケット型の「ビンマート」とコンビニエンスストア型の「ビンマート・プラス」の2形態を運営している。

 

 同社は「顧客ニーズを満足させること」「生活の質を高めること」をビジョンとしており、その取り組みの1つとして新鮮な野菜・果物を積極的に取り入れている。「主婦のニーズに応え、かつ一般のコンビニエンスストアでは買えないものを提供したい」として、ビンマートだけでなくビンマート・プラスでも新鮮な野菜・果物を販売している。同社の取り組みを紹介したカオ・キム・チー部長は「Farm to Fork(農場から食卓まで)」のモットーを掲げた上で「品質と安全性が保証された野菜・果物を提供していきたい」と述べた。

 

 2015年末までにビンマート59店舗、ビンマート・プラス355店舗、2017年までにはそれぞれ100店舗、1,000店舗まで展開する計画が立てられている。

 

 参加企業からの主な質問、およびチー部長の回答は以下のとおり。

 

問:食材の配送に関してはどのような取り組みをしているのか。

 

答:現在は業者を使っているが、徐々に自社配送にシフトしている。その1つとして最近、物流と輸送システムを取り扱う地場企業を買収した。

 

問:ビンマートはビングループの1つの子会社だが、同社が事業を展開する当たって決定権はどこにあるのか。

 

答:ビングループ内の企業はそれぞれ独立採算制を採用しているため、ビンマートの事業展開に当たっては社内に権限がある。

村松健

(ベトナム)

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