純米酒はアルコール度数15度を超えても低税率に

(タイ)

バンコク事務所

2015年08月13日

 タイの酒類および酒税率を定める省令では2013年9月以降、アルコール度数が15度を超えると高税率、15度以下だと低税率が課されている。15度以下だと醸造酒、15度を超えると蒸留酒に分類されるためだ。しかし、ジェトロ・バンコク事務所がタイの弁護士事務所に確認したところ、「醸造アルコールを添加していない純米酒(純米吟醸・純米大吟醸を含む)であれば度数が15度を超えても醸造酒に分類されるべき」とのことだった。そこで、在タイ日本大使館とともに物品税局にヒアリングしたところ、一定の手続きを踏んだ純米酒については低税率が適用されるとのことだった。

<ラベルの使用許可申請時に醸造酒と認めてもらうこと>

 ある銘柄の日本酒を初めてタイに輸入する前に、輸入者は物品税局にラベルの使用許可申請を行わなければならない。この申請に対して、物品税局は輸入しようとしている酒が蒸留酒か、醸造酒のどちらに分類されるかを記載したラベルの使用許可書を発行する。

 

 従って、アルコール度数が15度を超える純米酒(純米吟醸・純米大吟醸を含む)をタイに輸入する場合、ラベルの使用許可申請時点で醸造酒であることを物品税局に認めてもらい、醸造酒であることが記載されたラベルの使用許可書を入手する必要がある。なお、酒税は実際の輸入手続きごとに物品税局に納めることになる。

 

<蔵元の委任状や製造工程表などが必要>

 通常のラベルの使用許可申請には、(1)申請を行う輸入業者がタイでの唯一の輸入代理業者であることを記載した、蔵元発行の委任状(Letter of Appointment)、(2)ラベルサンプル(a.日本語のオリジナルラベル、b.オリジナルラベルをコピーし英訳したラベル、c.オリジナルラベルをコピーしタイ語に訳したラベル)、(3)酒類販売ライセンスの証明書、(4)登記簿謄本のコピー、を輸入者が物品税局に提出する必要がある。

 

 アルコール度数が15度を超える純米酒を醸造酒として日本から輸入する場合、(1)の蔵元からの委任状に加え、(5)蔵元が発行して代表者のサインと社印が押印された製造工程表(Flowchart)、(6)原材料リスト(Material Format)を入手する必要がある。さらに、(7)日本酒造中央組合が発行する一般的な純米酒の製造工程表も必要となる。

 

<物品税局の担当者により異なる指摘も>

 実際にこれらの書類をそろえて申請し、15度を超える純米酒を低税率で日本から輸入できたバンコク・ビア・アンド・ビバレッジズ(Bangkok Beer BeveragesBBB)に確認したところ、物品税局の担当官により異なる指摘があるということに加え、以下の注意点を挙げた。

 

1)委任状:蔵元の電話番号やFAX番号をボトルに記載されているとおり厳密に記載すること。なお、申請書の中段には英文で必ず「Below these all products we authorized and confirmed to never include in distilled alcohol on attached production method」(以下の全ての製品については、添付製造方法の中で、蒸留アルコールは一切含まれていないことを認め、確認した)の文言を加えること。

 

2)製造工程表、原材料リスト:電話番号、FAX番号はボトルに記載されているとおり厳密に記載すること。なお減税したい商品が複数ある場合は、1商品ずつ作成すること。

 

 なお、酒類には物品税に加え、内国税、健康振興基金負担金、付加価値税も課税される。このためBBBによると、仮にアルコール度数が15度を超す日本酒(1升瓶)をCIF価格1,500バーツ(約5,250円、1バーツ=約3.5円)でタイに輸入したとすると、醸造酒と認められた場合は蒸留酒扱いされた場合と比べて約440バーツの減税効果がある、とのことだった。

 

 なお、アルコール度数が15度を超える醸造アルコールを添加した本醸造酒や吟醸酒、大吟醸酒に関しては高税率が適用される。

 

(長谷場純一郎)

(タイ)

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