対内直接投資促進の新外資法を公布

(チリ)

サンティアゴ事務所

2015年07月09日

 バチェレ大統領は6月16日、外資法(DL600号)に代わる、新たな対内直接投資の規定を定め、新機関を設立する法律(法20848号、2015年6月25日官報掲載)を公布した。これにより、DL600号において保証されていた税率不変性は、新法発効後4年間の移行期間の後に廃止される。1974年に施行され、チリの投資誘致の推進役とされたDL600号に代わる新法の効果が注目される。

41年前に制定されたDL600号を廃止>

 DL600号に代わる対内直接投資促進法案(2015年4月6日記事参照)は、上院において、地方政府とも調整の上で投資誘致活動が進められるよう修正が加えられた後、新法として公布された。

 

 政府は、DL600号の廃止に関し、41年前に定められた法令であり、チリの政治・経済状況の変化により、現状に適さなくなったため、と説明している。新法の4つのポイントは、(1)対内直接投資の増大、(2)法制の刷新、(3)新法への段階的移行、(4)新機関の設置。これにより、OECDPFI(投資のための政策枠組み)要件を満たし、国家戦略に基づく投資誘致活動が行われることになる。

 

<新機関の対内投資促進庁が積極的に誘致活動>

 外国投資委員会(CIE)に代わって設置される対内投資促進庁(API)は、国家戦略に基づく対内直接投資促進活動の実施、投資証明書の発行、投資に関連する情報および統計の収集、記録、管理などの役割を担う。APICIEと大きく異なるのは、大統領が定める投資誘致に関する戦略(重点分野や地域)に基づき、積極的な活動を行うようになる点だ。同戦略の策定に当たっては、閣僚委員会が協議し、大統領に提案を行う。この閣僚委員会の議長は経済相が務め、メンバーについては財務相以外は大統領が定める。閣僚委員会は年2回以上招集される。また、APIの投資促進活動により、市場調査から法人設立後の再投資までの全段階において、投資家への情報提供や支援が幅広く行われるようになる。APIの人員構成や活動開始日は、新法の官報掲載日から1年以内に政令として公布される。

 

4年の移行期間後に税率不変性を廃止>

 新法の発効以前に締結されたDL600号に基づく投資契約および法20469号(DL600号に修正を加えた法)の移行条項4条に基づいて定められた期間内に締結された契約は、引き続き有効とされる(新法移行条項第1条)。

 

 新法の発効後4年間の移行期間中は、DL600号に基づく国との投資契約の締結が可能で、税率不変性(DL6007条の法人税および11条の3の鉱業開発プロジェクトにかかる諸税)も保証される。ただし、法人税の固定税率は44.2%から44.45%に引き上げられる(新法移行条項第2条)。移行期間の終了後には、税率不変性は廃止される。また、国との投資契約の締結も行われない。代わりに、APIから投資証明書の発行を受けることができるようになる(新法4条)。

 

 投資案件用の輸入資本財に対する付加価値税(IVA)の免除は、引き続き適用されるが、IVA法(DL825号)12B10が改定され(新法8条、20条)、投資家はAPI発行の投資証明書を付して財務省にIVA免除の申請を行うことになり、IVA免除の対象となる資本財は財務省が政令により定めることとなった。

 

堀之内貴治、小竹めぐみ)

(チリ)

ビジネス短信 d6cde30d2ed990e9