ニューヨーク市、飲食店での生鮮魚の事前冷凍を義務化-FDAのガイダンスに基づいて実施-

(米国)

ニューヨーク事務所

2015年07月28日

 ニューヨーク市保健精神衛生局は7月9日、飲食店における魚の取り扱いについて新たな規則を発表した。2015年8月8日から市内の飲食店は、生、または生の状態でのマリネ、もしくは十分に加熱処理されていない状態で魚を提供する場合、寄生虫を防ぐために魚を一度冷凍することが義務付けられる。この規則は食品医薬品局(FDA)のガイダンスに基づいたもので、貝類や一部の種類のマグロ、養殖魚や魚卵は適用範囲外となる。

<魚の寄生虫を殺すことが目的>

 新たな規則は、冷凍により魚の寄生虫を殺すことが目的で、自店で冷凍できない飲食店は、冷凍の魚・魚製品を購入しなければならない。

 

 魚を冷凍する際の冷凍温度および冷凍保存温度、冷凍保存期間については、表の3パターンのうち1つを順守する必要がある。

 生、または生の状態でのマリネ、もしくは十分に加熱処理されていない状態で提供される魚であっても、事前冷凍義務の適用外となるものもある。貝類、一部の種類のマグロ(ビンナガ、キハダ、メバチ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロ、タイセイヨウクロマグロ)、養殖魚(注)、魚卵は対象外となっている。

 

 今回の魚の事前冷凍義務化はニューヨーク市が初めてではない。FDAは寄生虫を殺すために魚を事前冷凍することを以前から推奨しており、ネバダ州やバージニア州では既に同様な規則が存在する。

 

<多くの飲食店は以前から冷凍した魚を使用>

 「ニューヨーク・タイムズ」紙(電子版710日)は「ニューヨーク市内のトップレストランで働く多くのシェフは、寄生虫やバクテリアを魚の表面から除去するために以前から事前冷凍した魚を使用している」と報じた上で、事前冷凍の魚を使用する市内の高級すし店の例を紹介した。同店では、医療用低温冷凍庫(medical cryogenic freezer)を使用して魚を華氏マイナス83度(摂氏約マイナス64度)で冷凍しており、同店関係者は「顧客は一度冷凍した魚と冷凍していない魚の味の違いを見分けることができない」と述べている。

 

 また、同紙は「ニューヨーク州レストラン協会は本規則に抗議していたものの、態度を逆転させた」と報じている。同協会法律顧問のジェームズ・W・ベルソキー氏は、「以前から大部分の魚は流通過程のどこかの段階で急速冷凍されている」とし、「みんなが食べるすしの品質に変化はないだろう」と述べている。

 

(注)「網で仕切られた開放水域、もしくは地上の池や水槽で養殖され」かつ「寄生虫感染の危険がないペレットなどの人工餌で育てられたもの」という条件がある。

 

(三橋謙一、熊谷樹里)

(米国)

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