EUとの交渉再開に向け、大統領が政党連帯呼び掛け-産業界からは早期安定を望む声-

(ギリシャ、EU、ユーロ圏)

ミラノ事務所

2015年07月08日

 7月5日に行われた国民投票の終了後、ギリシャは債権団との交渉再開に向けての動きをみせた。ヤニス・バルファキス財務相は7月6日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)における交渉の円滑化を理由に辞任した。プロコピス・パブロプロス大統領は政党への連帯を呼び掛けた。産業界からは、早期の情勢安定化を求める声が相次いでいる。

<交渉円滑化を理由に財務相が交代>

 バルファキス氏は財務相辞任の理由について、76日に自身の持つウェブサイトおよび財務省のウェブサイトで、ユーログループの一部参加者が同氏の会合参加を歓迎していないことから、両者の合意形成を導くためと表明した。同日、新財務相には債権団との関係が良好とされるユークリッド・ツァカロトス外務副大臣が任命され、財務省ウェブサイトに両氏による文書が掲載された。

 

 国民投票の反対多数の結果を受けて、賛成への投票を呼び掛けていた野党・新民主主義党(ND)のアントニス・サマラス前首相が党首を辞任、臨時党首にはエバンゲロス・ミマラキス氏が就任した。

 

<挙国一致へ各党党首の会議を開催>

 現地紙「ANAMPA」(電子版)によると、パブロプロス大統領はアレクシス・ツィプラス首相との会談で、首相の表明する緊縮財政終了への同調を示し、ギリシャの提案は現実的かつ論理的なものとなり、確実な解決策や公正な妥協点を探るために直ちに交渉に入ることができると表明した。また、EUとの交渉に向け政党間での連帯、挙国一致での対応の重要性を強調した。これに応ずるかたちで各党党首による会議が開催され、NDのミマラキス臨時党首、独立ギリシャ人(ANEL)のパノス・カメノス党首、親EUの新興政党ト・ポタミ(TO POTAMI)のスタブロス・テオドラキス党首、ギリシャ共産党(KKE)のディミトリス・クツバス書記長、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のフォフィ・ゲニマタ党首が参加した。約7時間に及ぶ会議の結果、報道陣向けに出された文書で、KKE以外の党首はユーロ圏残留に向けた解決策を模索するための交渉を継続すべきだ、との合意に至ったとした。

 

<産業界は銀行の営業再開を求める>

 一方、産業界は情勢の安定化を求めている。ギリシャ企業連盟(SEV)は国民投票前の73日に、財政破綻した2000年代のアルゼンチンと現在のギリシャの財政状況の類似点を指摘し、国民投票での緊縮財政案受諾への賛成を呼び掛けていた。またSEVを筆頭に、ギリシャ全国の産業団体は、銀行営業に関する政府発表への不安と懐疑を表明し、雇用の回復と通常の生活を取り戻すために、賛成に投票するよう共同声明を出していた。投票翌日の76日には、アテネ中小企業会議所のP・ラバニ会長は、不透明な経済情勢と銀行休業による企業の窮状を訴え、資金調達のために早期の合意と銀行の営業再開を求める声明を発表した。

 

(山内正史、野嶋生代)

(ギリシャ、EU、ユーロ圏)

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