国民と在留外国人にDNA検査を義務化-自爆テロ事件を受け治安対策を強化-
(クウェート)
ドバイ事務所
2015年07月13日
国民議会は7月1日、国民と在留外国人にDNA検査を義務付ける法案を可決した。犯罪者の迅速な摘発を目的としており、内務省はDNA情報をデータベース化する。シーア派モスクでの自爆テロ事件を受け、治安維持対策の強化の一環として実施される予定。
<提出拒否者には禁固1年と罰金>
7月1日、国民議会はクウェートの国民(約130万人)と在留外国人(約290万人)に、DNA検査を義務付ける法案を可決し、約4億ドルの事業予算を承認した。犯罪者の迅速な逮捕が目的とされ、今後、内務省がDNA情報をデータベース化するという。6月26日に発生した自爆テロ事件による治安対策の徹底が背景にあるとされる。DNAサンプルの提出を拒否した者には、禁固1年および最大罰金1万クウェート・ディナール(約401万円、1ディナール=約401円)、虚偽のサンプルを提出した者には禁固7年の罰則が科される。
6月26日、クウェート中心部にあるイスラム教シーア派のイマーム・サーディク・モスクで、金曜日昼の最も人が集まる礼拝を狙った自爆テロが発生、27人が死亡、227人が負傷した。実行犯は、若いサウジアラビア国籍の男(1992年生まれ)と発表されている。実行犯を現場まで搬送した運転手および車の所有者、これら2人が住んでいた住居のオーナーらが逮捕された。国籍はクウェート、サウジアラビア、無国籍者だとされている。また、事件に関して「イラクとシャームのイスラム国(ISIS)」が犯行声明を出している。
<自爆テロは宗派対立の扇動が狙いか>
イラクと国境を接するクウェートは、2014年6月にISISがイラクのモスル市を支配して以降、テロなどの脅威に対して治安対策を強化してきたが、そのような中で、多くの政府関係機関が集まり、治安維持の責務を持つ内務省のすぐ近くにあるモスクが狙われたことに、国内外で驚きの声が上がっている。国内の取り締まりだけでなく、水際での摘発が重要だが、湾岸協力会議(GCC)加盟6ヵ国の協定に基づき、サウジアラビア国籍者なら査証なしで出入国できることが、治安維持の難しさを物語っている。また、テロの協力者の中に、クウェート国内で10万人を超えるといわれる無国籍者(ヒドゥン)がいたことで問題がより複雑になっている。5月にサウジアラビア東部で発生した2件の自爆テロと同様、シーア派モスクが攻撃対象となったことは、スンニ派とシーア派の宗派対立があまりないといわれてきたクウェートで、宗派対立を扇動することを狙ったとみられている。
クウェートのサバーハ首長は、事件直後に現場となったモスクを訪問し、7月1日には犠牲者の遺族と宮殿で面会し、哀悼の意を伝え、凄惨(せいさん)なテロ行為を非難した。
(橋本諭)
(クウェート)
ビジネス短信 8b2c4fd64d5214e8




閉じる
