マレーシア・トルコFTAが8月1日に発効

(マレーシア、トルコ)

クアラルンプール事務所

2015年07月29日

 マレーシアとトルコの自由貿易協定(MTFTA)が8月1日に発効する。直ちに7割の品目の関税とともに、トルコが繊維製品などに課している追加関税も撤廃される。MTFTAがマレーシアの貿易をカバーする割合はわずかだが、初めて中東の国とのFTAが発効する意義は大きい。

8年後には約86%の品目の関税を撤廃・削減>

 ムスタパ国際貿易産業相は716日、マレーシア・トルコ自由貿易協定(MTFTA)が81日に発効すると発表した。人口7,400万のトルコは巨大な潜在市場を抱えているだけに、同相はマレーシアのビジネス界にMTFTAを活用するよう促すと同時に、MTFTAは長期にわたって築かれてきた両国間の貿易・経済連携をさらに強化することにも資するとした。両国は2014417日に協定書への署名を終えている(協定の詳細は2014年8月4日記事参照)。

 

 MTFTAが発効すると、マレーシア、トルコ両国は関税分類品目の70%の関税を直ちに撤廃する。両国はさらに、8年後に撤廃・削減対象品目の割合を約86%に引き上げる予定だ。トルコの関税撤廃スケジュールは(1)協定発効と同時に関税を即時撤廃する品目、(2)協定発効後3年で関税を削減・撤廃する品目、(3)協定発効後5年で関税を削減・撤廃する品目、(4)協定発効後8年で関税を段階的に削減する品目、に分けられる。

 

 2014年の両国間の貿易額は32億リンギ(約1,024億円、1リンギ=約32円)と、5年前の2009年に比べて53.4%増加した。同期間にマレーシアの世界との貿易額が46.8%増加したことからすると、マレーシアの対トルコ貿易はそれ以上に拡大したことになる。貿易収支はマレーシアの黒字が続いている(図参照)。トルコへの主要な輸出品目は繊維・アパレル、化学製品、パーム油・同製品、金属製品、ゴム製品、電気・電子(EE)製品、トルコからの輸入品は繊維・アパレル、機械類、鉄鋼製品、化学製品、農産物、EE製品が大半を占める。

<トルコ側の追加関税も撤廃>

 ムスタパ国際貿易産業相は、マレーシアが協定発効時点から即座にメリットを得られる輸出品目として、繊維・アパレル、EE製品、化学製品、鉄鋼製品、機械類、木製品、皮革製品などの一部とゴム製品の全てを挙げる。例えば、現在、衣類をトルコに輸出する場合は4%の関税が課されるが、81日以降は撤廃されるので、輸出業者の価格競争力向上が見込まれる。

 

 両国は戦略的に重視する品目について、当初は関税を維持するが、協定発効後、前述のとおり最大で8年間かけて関税を撤廃することになっている。また、トルコ政府が経常収支の赤字を抑制するために導入している繊維・アパレル、履物などの追加関税(関税率:2030%)も全て撤廃される。追加関税は同国の関税分類品目の1,000品目以上に課されている。トルコはこれまでも、自由貿易協定(FTA)発効国の産品は課税対象外としてきた。

 

 パーム油・同製品についても、マレーシアの輸出業者は恩典を受ける。現時点では同製品の最恵国待遇(MFN)税率は最大46.8%に及ぶ。トルコはMTFTA発効後もこれら製品は戦略的品目として関税で保護するとしつつも、MTFTAを利用するマレーシア企業は軽減税率でトルコに輸出が可能となる。ムスタパ国際貿易産業相は、この措置によって、マレーシア産パーム油・同製品がトルコ市場において他国製品よりも高い競争力を有することになると指摘した。

 

<中東諸国との貿易拡大に期待>

 両国間のFTA交渉は20105月に始まり、ほぼ4年の歳月を経て署名にこぎ着けた。国際貿易産業省の発表資料では、協定はモノに焦点を当てた内容で構成されており、今後、投資やサービス分野も盛り込んだ協定に拡充していく方向にあるとする。MTFTA発効によって、マレーシア政府は一般特恵関税(GSP)を除くと13FTAを有することとなり、貿易総額のうちFTAでカバーする割合は62.8%に達するという。

 

 2014年時点で、MTFTAがマレーシアの貿易をカバーする割合は0.2%にすぎないが、両国首脳は協定発効により両国の貿易は今後一層の拡大が期待できるとしており、署名時に2020年までの両国間の貿易額を50億ドルに拡大することを提案していた(2014年は10億ドル)。また、マレーシアにとって、MTFTAは初めて発効に至った中東の国との2国間FTAとなるだけに、中東諸国との貿易拡大の端緒となることが期待されている。

 

(新田浩之)

(マレーシア、トルコ)

ビジネス短信 53e209605848b475