日・オマーン投資協定に両国が署名
(オマーン、日本)
ドバイ事務所
2015年07月13日
オマーンと日本両国政府は6月19日、投資の促進・保護を図るための投資協定に署名した。同協定は双方の国内手続きを経て発効する。オマーンは外資誘致の取り組みを強化しており、重点国と位置付ける日本からの投資拡大に期待している。
<企業活動の円滑化へ投資環境を整備>
オマーンと日本両政府は6月19日、東京で「投資の相互促進および相互保護に関する日本国とオマーン国との間の協定」(日・オマーン投資協定)に署名した。同協定は、締約国間における投資の促進・保護を図るため、内国民待遇、最恵国待遇、締約国による投資家との契約順守義務、投資保護、締約国と投資家との投資紛争解決などを規定しており、日本の経済産業省は「オマーンにおける投資環境の法的安定性が高まることにより、日本企業の投資活動の円滑化が期待できる」としている。なお、本協定の適用対象は投資後の段階で、投資前の参入段階は対象ではない。
日・オマーン投資協定は、2013年2月に交渉が開始され、2014年1月に安倍晋三首相がオマーンを訪問した際に実質合意していた(2015年1月21日記事参照)。その際、二重課税の回避などを定めた租税条約が一足先に署名され、同年9月に発効した。投資協定は必要な国内法上の手続きを双方が完了させ、その旨を通告する外交上の公文交換の日から30日目に発効することになっている。オマーンを含む湾岸協力会議(GCC)諸国と日本との投資協定や租税条約は表のとおり。
<外資誘致戦略で日本を重視>
オマーンで外資誘致を担当する機関がイスラー(Ithraa:アラビア語で「豊かにする」の意味)だ。以前は投資輸出庁(PAIPED)と呼ばれており、2014年10月には東京でオマーン投資フォーラムを中東協力センターなどと共催している。
6月にイスラーの投資促進担当者に取材したところ、2009年に策定された外資誘致戦略を2015年中に改定する作業中で、外資誘致の取り組みを一層強化していくとのことだった。担当者は「日本は戦略的重点国の1つ」と述べ、日・オマーン投資協定が日本からの投資拡大に寄与することに期待を示した。
オマーンの2014年の外国直接投資(FDI)受け入れ額は11億8,000万ドルで、隣国のアラブ首長国連邦(UAE、100億6,600万ドル)やサウジアラビア(80億1,200万ドル)と比べて低い水準にとどまっている〔国連貿易開発会議(UNCTAD)〕。イスラーの担当者によると、投資元は英国、米国、UAEの3ヵ国が中心で、そのほかにはGCC諸国、インド、シンガポール、中国、韓国などからの投資が続く。エネルギー業、製造業、金融業、運輸業などが多いという。日本企業は石油・ガスのエネルギー分野や発電・造水のインフラ分野で、商社やエンジニアリング会社など10社程度が進出しており、在留邦人は139人だ(2015年5月時点)。
イスラーでは、オマーンがインド洋に面しており、イランとアラビア半島の間のホルムズ海峡を通らずに外洋とつながる地理的な優位性や、他の中東・北アフリカ諸国と比べて政治的に安定しているといった点を外国企業にアピールしていきたい、としている。
(内田政義)
(オマーン、日本)
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