国際統括本部の業務範囲の制限が判明-BOIがセミナー開催-

(タイ)

バンコク事務所

2015年07月14日

 タイ投資委員会(BOI)は7月1日、「地域の貿易・工業ハブとしてのタイ(Thailand: a Regional Trading and Modern Industry Hub)」と題するセミナーを開催した。2015年1月から施行された新投資奨励政策で新たに設置され、企業の期待が高い、国際統括本部(IHQ)と国際貿易センター(ITC)の各投資奨励事業について、BOIから新たな発表があった。その変更点を中心に報告する。

IHQITC業務は関連会社の調達支援のみ>

 BOIは当初、「国際統括本部(IHQ)事業は国際貿易センター(ITC)事業を含む上位制度」と説明していた。しかし、今回発表された内容では、IHQで認められるITC業務には国内外の関連会社の調達支援のみ、という制限が設けられることが明らかになった。

 

 一般的にIHQが介在する商流には、a.INOUT取引(タイ国内からタイ国外向けの輸出)、b.OUTIN取引(タイ国外からタイ国内への輸入)、c.ININ取引(タイ国内からタイ国内への販売)、d.OUTOUT取引(タイ国外からタイ国外への3国間貿易などの取引)が考えられる。これらの取引において、調達側は必ずIHQの関連会社でなければならないという制限が付き、扱える商材も「原材料および部品」に限定された。このため、完成品はIHQでは扱えなくなった。この理由について、BOIは「IHQの統括機能に注目した結果、取引を限定することになった」と説明している。

 

 一方、ITCが介在する商流には、関連会社という限定がない上、完成品の取り扱いも可能だ。この点については、これまでのBOIの説明から変更はなかった。

 

<法人税が10%に軽減される収入の適用対象に変更点>

 IHQとして認可された事業は、国外関連会社からのロイヤルティーなど歳入局の定める特定の収入につき、法人税が0%となる実質免税や10%の軽減税率が適用される。今回の公表では、10%の軽減税率が適用される収入に変更があった。歳入局の説明によると、10%の軽減税率が適用される収入として、国外の関連会社からのマネジメント、技術サービス、支援サービスなどによる収入、ロイヤルティー収入が明示される一方で、以前の説明では適用対象だった「国外での製造を目的に、タイ国内から原材料または部品を調達し、国外の関連企業に販売する取引(INOUT)による収入」という項目が削除された。

 

<関連会社の定義が拡大>

 また、これまで明らかでなかった「関連会社」の定義についても説明がなされた。企業グループの構造が複雑になっていることに対応し、対象が拡大したものとみられる。

 

 IHQで定める関連会社の定義について、BOIは次の歳入局の定義を適用するとした。

 

1.(タイに設立された)IHQの子会社や孫会社のライン

1IHQが直接または間接的に総資本の25%以上を持つ企業

2IHQがコントロールまたは監督する権限を持つ企業

 

2.IHQの親会社ライン

1IHQに対し直接または間接的に総資本の25%以上を持つ企業

2IHQをコントロールまたは監督する権限を持つ企業

 

3.IHQからみた親戚企業ライン

1IHQの親会社やその親会社が直接または間接的に総資本の25%以上を持つ企業

2IHQの親会社やその親会社がコントロールまたは監督する権限を持つ企業

 

IHQITCの両事業を行うには両方の資本金が必要に>

 今般の変更を踏まえると、タイに統括本部機能としてのIHQと、商流・商材に限定がないITCの両方の奨励事業の認可を受けたいという企業が出てくるだろう。しかし、その際の資本金の条件はそれぞれ1,000万バーツ(約3,600万円、1バーツ=約3.6円)となっており、BOIによると両事業を行うためには合計2,000万バーツが必要となるとのことだった。さらに、BOIの奨励事業がIHQITCに分かれてしまうため、会計もIHQITCで分ける必要があるとのことで、注意が必要だ。

 

<金型の輸入販売などは小売業の外国人事業許可の取得を>

 BOIの新投資制度におけるIHQITCの奨励事業は、これまで外国人事業法の規制により原則的には単独資本ではできない卸売業、小売業への参入を可能にするものとして、特に外資企業からの期待が高かった。この点について、外資企業による卸売業はIHQでは限定的に、またITCではほぼ完全に認められることになった一方、小売業はともに認められないことになった。

 

 商務省は、小売業について「最終消費者に販売すること」と定義しており、例えばIHQITCが金型を輸入して工場に直接販売した場合は、当該取引は小売りに該当するとしている。従って、外資による出資が過半数を占める外国法人が金型を輸入したい場合、IHQITCの認可を受けていても、外国人事業法に抵触することになり、別途、商務省事業開発局から小売業の外国人事業許可(FBL)を取得しなければならない。また商務省によると、FBL1件取得するためには300万バーツの資本金が必要だ。しかし、ITCIHQでは既に1,000万バーツの払込資本金が求められており、300万バーツの条件は満たしているように考えられる。この点について聞いたところ、「ITCまたはIHQの払込資本金1,000万バーツとは別に、小売業のFBLのために300万バーツの資本金が必要。従って、金型輸入のような小売業をIHQITCが行う場合、合計1,300万バーツの資本金が必要となる」との回答だった。

 

 今回のセミナーでは、配布資料が概要にとどまったことや、その場で回答できない質疑などがあったことから、BOIのヒランヤ長官は「関心がある企業は是非ワンスタート・ワンストップ投資センター(OSOS)を活用し、相談してほしい」と話した。

 

 照会先は下記のとおり。

○ワンスタート・ワンストップ投資センター(OSOS

住所:18th Floor, Chamchuri Square Building, 319 Phayathai Road, Pathumwan

Bangkok 10330, Thailand

電話:02 209 1100

Emailosos@boi.go.th

 

長谷塲純一郎、若松寛

(タイ)

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