食品安全強化法セミナーでFDAが外国政府や貿易機関に制度周知を促す

(米国)

シカゴ事務所

2015年06月05日

 食品安全強化法(FSMA)に関するセミナーが5月15日、ニューヨークで開催された。サイモン・グラック・ケーン法律事務所と在米韓国商工会議所の共催によるもので、食品医薬品局(FDA)の上級政策アドバイザーが講師を務めた。聴講者は外国政府機関や貿易機関、外国の商工会議所、輸入業者で、輸入食品に影響の大きい外国供給業者検証プログラムを中心に、今後の運用に関する説明が行われた。

<外国供給業者検証プログラムが焦点に>

 今回のセミナーは、聴講者が外国政府・貿易機関や、外国の商工会議所と輸入業者に限られ、輸入食品に影響の大きい外国供給業者検証プログラム(輸入業者に対し、リスクに応じて外国供給業者の検証を義務付ける規則)が中心の内容だった。

 

 危害の予防管理に関する規則は20158月に最終化(その1年後に適用開始)、外国供給業者検証プログラムに関する規則は201510月に最終化(その18ヵ月後に適用開始)される予定であり、輸入品を製造する外国の食品メーカーや外国の輸入業者に、FSMAをいかに順守させるかが課題となっている。このことは、FDA4月にワシントンで開いた公聴会においても指摘されており、FDAとしては外国政府機関などへの制度周知を図ることで、米国に輸出している各国の食品メーカーや輸入企業に、FSMAの周知を促したいとの意図があるようだ。

 

<画一的には運用されないFSMA

 セミナーにおいては、これまでに公表されている規則案の概要や、規則最終化後の運用について、FDAから説明があった。説明後に、ジェトロから以下の点を直接FDAに質問し、回答を得ることができた。なお、これは現時点でのFDAのコメントであり、最終的な判断ではないことに留意されたい。

 

問:輸入業者が、外国の食品メーカーから集める書類について英訳する必要があるのか。

 

答:外国供給業者検証プログラムで2年間の記録保存が求められている書類(注)については英訳する必要があるだろう。日々のオペレーションに関するものを全て英訳する必要はない。

 

問:規則最終化後に公表予定のガイダンスの内容およびその公表時期はどうなる予定か。

 

答:今回のFSMAは画一的な運用にしない。規則と同様、ガイダンスもある程度柔軟性を持ったものになる可能性がある。どこまで柔軟性があるかは現時点では分からない。公表時期は規則最終化と同時であるのが理想だが、そうでないものもあるだろう。危害の予防管理に関する規則については、規則最終化と同時にガイダンスを出せるかもしれない。

 

問:ガイダンスは英語以外の言語で発行されるのか。

 

答:パブリックコメントに付される規則案に関しては、その概要に限り英語以外の言語(日本語も含む)でウェブサイト上で内容の紹介を行ってきた。しかし、ガイダンスの全てを英語以外の言語で用意できるかどうかは分からない。

 

問:民間の世界食品安全イニシアチブ(GFSI)の認証に係る外部監査を食品メーカーが受けている場合、輸入企業は当該食品メーカーからその監査結果を入手することをもって、外国食品供給業者検証プログラムによる食品メーカーの検証を行ったことになるか。

 

答:FSMAは、民間の国際食品認証制度でカバーできない部分がある。GFSIの重要性は認識しているため、GFSIとの対話は続けている。今後どうなるかは、今の段階では分からない。

 

 4月のワシントンでの公聴会に続き、今回の個別セミナーにおいても、規則の内容よりも、規則をどう実行に移すかが焦点となった。予定どおりに規則の最終化が進めば、添付資料のとおり、適用が開始される。規則やガイダンスの内容がある程度、柔軟性を持つ可能性はあるが、米国に輸出を希望する各企業においては、個別相談できる弁護士や専門家の確保、社内での情報収集やリスク管理を強化する体制の整備など、各社で対策を進めることが重要だ。

 

(注)外国の食品メーカーが作成する危害の予防に関する食品安全計画や、定期的な自社のモニタリング結果などを指すと思われる。

 

(伊藤大介)

(米国)

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