日系企業に特例措置、証券取引規則を一部緩和

(バングラデシュ)

ダッカ事務所

2015年06月23日

 資本金の額に応じて、非公開会社(Private Limited)を公開会社(Public Limited)もしくは上場会社(Listed Company)に転換しなければならないとする証券取引委員会規則が、日本企業に対して一部緩和された。同規則は会社の形態や義務を定めた会社法には規定がなく、証券取引法でのみ定められているが、進出日系企業は会社運営の機動性を損なうものとして、政府に緩和を要求していた。

<資本金の額に応じ会社形態変更の義務>

 68日、バングラデシュ証券取引委員会(BSEC)は、兼ねて申請を行っていた日系企業5社に対して、払込資本金の額に応じた会社形態の変更義務を特例として免除すると発表した。バングラデシュでは、外資系企業を含む全ての非公開会社に対して以下のような規則が適用される。

 

1)払込資本金が1億タカ(約16,000万円、1タカ=約1.6円)を超える場合、BSECの事前承認を要する。

24億タカを超える場合、6ヵ月以内に公開会社に転換しなければならない。

35億タカを超える場合、最低30%の株式を追加上場しなければならない。

 

 (1)は1969年発効の証券取引法(Security and Exchange Ordinance 1969)で、(2)と(3)は20062月発効の同法改正通達(SECCMRRCD2006159Admin0323)によって規定されている。今回、5社に対して適用免除された規則は(2)と(3)だ。

 

 同規則はもともと、会社の透明性確保ならびにダッカとチッタゴンにある国内2ヵ所の証券取引所の資産額と取引額拡大を意図したものだが、一定数の企業が上場を果たしたことに加え、規則発効当時と比べ「ドル高・タカ安」が進行したことなどから、特に製造業分野の企業から実態に合っていないとの声が上がっていた。また、会社の形態に係る規則であるにもかかわらず、会社法(1994年)の中では同ルールについて触れられていないという法的な問題点も指摘されていた。

 

<形骸化した規則を投資の阻害要因と認める>

 一方で、払込資本金が4億または5億タカを超える場合であっても、当該企業がBSECへ事前申請することによって、多くのケースで一定期間もしくは無期限の適用免除が受けられるという実態もあり、規則が形骸化していた。ただし、適用免除には申請から数ヵ月かかることが多く、免除の条件も不明確だったことから、コンプライアンスを重視する日系企業からルールの緩和と運用の透明化が求められていた。

 

 この問題について、415日にダッカ日本商工会ならびに日本バングラデシュ商工会議所(JBCCI)はBSECのカイルル・ホセイン会長に対して改善の申し入れを行った。これに対してBSECは、当該規則が日本企業のバングラデシュ投資を阻害する要因になっていることを認め、進出日系企業ならびに日本企業との合弁会社に対しては、当面の対応策として、申請があれば3営業日以内に適用を免除するとした。しかし、1億タカを超える非公開会社の事前承認ルールについては、通達ではなく証券取引法の改正が必要なため、免除を見合わせた。

 

 公開会社は株式発行など資金調達の自由度は高まるものの、7人以上の株主が必要なことや、第三者による財務資料の閲覧請求権などから、事実上経営の自由度は低くなる。通常、外資系企業は資金のほとんどを親会社など海外から調達しているため、公開会社になるメリットは極めて小さいといえる。なお、上場企業になると法人税が35%から25%に引き下げられる。

 

(河野敬)

(バングラデシュ)

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