第1四半期のGDP成長率は前期比0.8%

(韓国)

ソウル事務所

2015年06月01日

 韓国銀行(中央銀行)の発表によると、2015年第1四半期の実質GDP成長率(速報値、以下同じ)は前期比0.8%で、4四半期連続で1%を下回る成長率となった。建設投資の著しい増加が主な牽引役だが、多くの現地メディアは設備投資や輸出の停滞に懸念を示している。

<前年同期比成長率は2.4%、建設投資が大きく増加>
 韓国銀行の4月23日の発表によると、2015年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率は前期比0.8%となり、4四半期連続で1%を下回った(図参照)。一方、前年同期比では2.4%の成長率だった。

 実質GDP成長率(前期比)を支出項目別にみると、民間消費が耐久財とサービスの消費を中心に0.6%増加し、建設投資も住居用建物の増加により7.5%増と大きく伸びた(表参照)。一方、設備投資は輸送装備が増加した半面、機械類が減少したことで前期と同水準になった。輸出も、サービス輸出が増加したにもかかわらず、液晶ディスプレー(LCD)や自動車などの財輸出の減少により前期と同水準だった。輸入は、海外旅行支出などの国外支出や運輸サービスなどを中心に0.5%増加した。

 経済活動別にみると、サービス業は金融保険、不動産・不動産賃貸業、保健・社会福祉などの増加により、0.9%増となった。製造業も、半導体や石油化学製品を中心に0.4%増加した。一方、電気・ガス・水道事業は、主に電気業が減少したことで3.6%減少した。

<韓国銀行は「民間消費は回復段階にある」>
 韓国銀行のチョン・スンチョル経済統計局長は記者会見で、「第1四半期における実質GDP成長率(0.8%)は、同行の2015年のGDP成長率展望値(3.1%、注1)の想定の範囲内で動いた」とコメントした。また、民間消費(0.6%)については「前期(0.5%)に比べては回復したが、絶対的数値としては高いとはいえない」とした上で、「民間消費が回復段階にはあるが、著しく活性化したとは評価できない」との見方を示した。

<設備投資と輸出の停滞を懸念する報道も>
 一方、国内のマスコミの多くは、設備投資と輸出の停滞に懸念を示している。「朝鮮BIZ」(電子版4月23日)は「韓国経済成長の主なモメンタムである輸出と設備投資が低迷しており、経済回復の勢いが今後弱まるとの見方が拡大している」「第1四半期の成長を主に牽引したのは建設投資だったが、建設投資は四半期ごとの変動が大きいため、建設投資が主導する経済成長を不安視する指摘もある」と報じた。

 また、GDP成長率を高められる政策として、政策金利の追加引き下げに言及する声も多い。「東亜日報」(4月24日)は「現在の韓国経済は政策金利(注2)の引き下げと拡張的財政政策が同時に必要だ」、「韓国経済新聞」(4月24日)は「第2四半期のGDP成長率を見極める必要はあるが、1回くらいの政策金利の引き下げの可能性は残されている」との有識者の見方を、それぞれ伝えた。

(注1)韓国銀行は4月9日に経済展望報告書を発表し、2015年のGDP成長率を3.4%(1月発表)から3.1%に下方修正した。
(注2)韓国銀行は3月12日に政策金利を2.00%から1.75%に引き下げた。この結果、政策金利が史上初めて2%を下回る水準になっている。

〔柳忠鉉(ユ・チュンヒョン)〕

(韓国)

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