新入管法による商用ビザ取得手続きに正確な理解が必要-「労働許可証・ビザ取得に関する最近の状況」セミナー(2)-

(ベトナム)

ハノイ事務所

2015年06月12日

 「労働許可証・ビザの取得に関する最近の状況」セミナー報告の後編は、ビザ取得手続きについて。2015年1月からの新しい出入国・通過・居住法(47/2014/QH13、以下:新入管法)の施行により、出張者や就労者の商用ビザ取得の実務が大きく変わった。労働許可証の取得手続きとも関連するため、実務に関する正確な理解が必要となる。

<ベトナムでの商用ビザ延長は困難>

 新入管法で査証(ビザ)の種類が細分化され、商用ビザについてはDN(ベトナム企業に勤務する外国人)およびNN3(駐在員事務所や支店で勤務する者)が実務上適用されている。出張者に対する商用ビザ申請手続きは以下のとおり。

 

1)ベトナム国内の出入国管理局〔招聘(しょうへい)状取得のため〕

○申請書類:投資証明書や駐在員事務所の設立許可書、印鑑登録証明書の公証写し、法的代表者の署名確認書(初回のみ)、申請書

○取得日数:5営業日以内

 

2)在外ベトナム大使館・領事館(ビザ取得のため)

○申請書類:申請書、招聘状、写真

○取得日数:3営業日以内

 

 実務上、商用ビザの期間は最長3ヵ月となっており、ベトナム国内での延長は通常困難だ。また、現地法人や駐在員事務所がない場合は招聘状を取得できないため、商用ビザは取得できない。また、(1)の出入国管理局はハノイ、ダナン、ホーチミンの3都市にしかないので、これらの都市以外に所在する企業の場合には取得までの必要日数に注意を要する。なお、(2)の招聘状は原本のコピーも認められている。

 

<労働許可証の発行前後でビザ取得手続きに違い>

 労働許可証を発行されていない者が赴任前にビザを取得する場合も、同様の手続きにより行う。この場合、ビザ申請の保証人と労働許可証の申請者が同一であれば、労働許可証取得後にDNNN3ビザから、他のビザ〔LD(外国人労働者)、NN2(外国企業の駐在員事務所長など)〕への変更が運用上認められている。この場合、労働許可証の申請中にビザの期限が切れる場合、ベトナム国内で最長1ヵ月間のビザ延長が可能となっている。ただし、ビザ申請の保証人と労働許可証の申請者が異なる場合は、労働許可証の発給を受けた後にベトナムの入国管理局でビザを申請し、いったん出国して在外ベトナム大使館・領事館で取得する必要がある。

 

 労働許可証を発行された者が赴任前にビザを取得する場合は、(1)の出入国管理局への申請書類に労働許可証が加わるほかは同様の手続きとなる。ただし、一時在留許可証(テンポラリー・レジデンスカード)はベトナム国外で申請できない。ビザの分類に基づいて条件を満たせば、テンポラリー・レジデンスカードの取得も可能(新入管法38条)だが、ビザと異なり、非居住者であっても個人所得税法上は居住者扱いとなる点に注意が必要だ。

 

<到着ビザは限られた場合に取得可能>

 到着ビザは以下の場合に限って取得が可能となるが、実務上は観光ビザのみの発給となるため、就労目的で長期ビザを取得したい場合にはいったん出国する必要がある。

 

○ビザ発給機関のない国から来た場合

○複数の国を経由して来た場合

○ベトナムの国際観光会社の主催ツアーに参加する目的で入国する場合

○ベトナムの港に停泊している船舶の船員で、別の港から出国する必要がある場合

○親族の葬儀への参加、重病人の見舞いを目的に入国する場合

○緊急事故、救助隊、レスキュー隊、災害防止、疫病対応、あるいはベトナム管轄機関からの要請による特別な理由で入国する場合

 

<質疑応答>

 セミナーに寄せられた事前質問、会場で出された主な質問は以下のとおり。

 

問:有限責任会社に法人が出資している場合、当該出資法人の代表者は労働許可証の免除対象となるか。

 

答:免除対象となるのは個人の出資者であるため、法人が出資する場合の代表者については労働許可証の取得が必要だ。

 

問:例えば第三国から日本を経てベトナムに赴任する場合、第三国の無犯罪証明も取得しなければならないのか。

 

答:「直近居住地の管轄機関による無犯罪証明書」が要求されているため、(ベトナムへの入国履歴がない前提で)日本の無犯罪証明を取得すればよいことになる。

 

問:ベトナム国内で健康診断を受診する場合、勤務する省でなければならないのか。

 

答:政府が指定したいずれかの病院を選択することができるので、必ずしも勤務する省の病院である必要はない。

 

問:3ヵ月の商用ビザ(DNNN3)は何度も取得することが可能なのか。

 

答:法律上の規定はないが、取得回数が多かったり滞在日数が長かったりした場合に、労働許可証を取得しない不法就労と見なされることもあると考えられる。

 

(竹内直生)

(ベトナム)

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