韓国のGDP成長に0.96%相当の寄与-中韓FTAが正式調印(2)-

(韓国、中国)

ソウル事務所

2015年06月11日

 中国との自由貿易協定(FTA)に正式に調印した韓国政府は6月1日、同FTAが発効すると、向こう10年間で韓国の実質GDPが追加的に0.96%成長すると発表した。同FTAは、国会での批准手続きが完了すれば発効する。中韓FTA正式調印の後編は、同FTAに対する韓国側の期待と批准に向けての障害について。

<正式署名後に韓中両国首脳が親書を交換>

 韓国政府は、61日にソウルで産業通商資源部の尹相直(ユン・サンジク)長官と中国商務部の高虎城部長が韓中FTAに正式に署名したと発表した。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は同FTAの正式署名を祝い、両国首脳が交換した親書の中で、「両国間における戦略的協力パートナーシップを深める歴史的な道しるべになる」とした。一方、中国の習近平国家主席は「東アジアおよびアジア太平洋地域の経済統合に貢献する」と述べた。

 

 中韓FTAは、20141110日に実質妥結が宣言され(2014年11月12記事12月15日記事参照)2015225日に仮署名(2015年3月6記事参照)された。韓国政府は、同FTAが発効すると今後10年間で、(1)実質GDPの追加的な成長が0.96%、(2)消費者に対する経済効果が約146億ドル、(3)財政効果が年平均で2,700億ウォン(約297億円、1ウォン=約0.11円)、(4)新たな雇用創出が53,805人になる、と分析している。その他の経済効果として、(1)非関税障壁(通関・認証・知的財産権)の解消による韓国中小企業の中国市場への進出活発化、(2)韓国を中国進出への足掛かりとするグローバル企業の対韓投資増加、(3)主な消費財(ファッション、化粧品、生活家電、プレミアム食品)の輸出拡大、などの期待を挙げた。

 

<国会での批准手続きで難航の予想も>

 同FTAの発効に向けて、国会での批准などの手続きが残っており、政府は、早期発効に向けての作業を迅速に推進する方針を明らかにしている。ただし、一部の国内マスコミは、国会での批准手続きに時間がかかる可能性に言及している。「東亜日報」(62日)は「新政治民主連合(第1野党)が韓中FTAの実質的妥結宣言の際に『韓中首脳会談(201411月開催)に合わせて韓中FTAという重大事を性急に妥結した』と批判していた」としつつ、「野党が強く批判した米国とのFTAなどが発効までに時間がかかった前例がある」と伝えた。一方、「毎日経済」(62日)は「農業団体の反発が予想される点が国会批准の重要な障害となる可能性がある」と報じた。

 

〔柳忠鉉(ユ・チュンヒョン

(韓国、中国)

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