対日投資拡大を呼び掛け-ロサンゼルスで日米経済交流セミナー開催-

(米国、日本)

ロサンゼルス事務所

2015年05月19日

 ジェトロは5月1日、ロサンゼルスで「日米経済交流セミナー」を開催し、日米のビジネスパーソンや米国政府・議会関係者など約400人が集まった。セミナーでは日米企業6社の代表によるパネルディスカッションが行われた。来賓としてキャロライン・ケネディ駐日大使やペニー・プリツカー商務長官が出席、訪米中の安倍晋三首相が米国企業に対日投資の拡大を呼び掛けた。
 

<日米企業6社の代表によるパネルディスカッションを実施>
 「日米経済交流セミナー」は安倍首相の訪米に合わせて経済産業省、ロサンゼルス市、南カリフォルニア日系企業協会(JBA)が後援して開催した。

 開会あいさつでジェトロの石毛博行理事長は「アベノミクスは日本の岩盤規制を打破するなど日本を活性化させたものの、米国による対日投資は日本の対米投資の6分の1以下にとどまっており、今後拡大が望まれる。安倍政権はジェトロに対日投資促進の中核的役割を与え、これまで多くの外国企業を支援してきたが、今こそ日本でのビジネスを拡大する時であり、まずジェトロに相談してほしい」と述べた。

 続いて日米企業6社によるパネルディスカッションが行われた。まず、アベノミクスによって日本市場への投資機会が増えることについてどう捉えているかにつき、米国企業3社のパネリストの見解が示された。

 C3エナジー(本社:カリフォルニア州)のトーマス・M・シーベル最高経営責任者(CEO)は「アベノミクスは2020年度をめどにエネルギー市場の大改革を試みている。日本は1人当たりのエネルギー効率で世界一を誇り、電力インフラ効率化の取り組みが行われているなど、多くのビジネスチャンスがある」と述べた。

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(本社:ニュージャージー州)のアレックス・ゴースキーCEOは、日本が抱える最大の問題は高齢化社会だと指摘した上で、「製薬や医療機器などのヘルスケア関連費用が現在の7倍になる時代が到来するとみている。特に臨床診断機器分野は成長機会のある市場とみており、日本への投資増強を考えている」と述べた。

 サード・ポイント(本社:ニューヨーク州)のダニエル・S・ローブCEOは「アベノミクスによって企業統治改革、株価の上昇、女性の雇用増などの成果がみられ、数年前と比べて日本の熱意を強く感じており、投資家としてとても楽しみにしている」と述べた。

 続いて、米国での事業展開、米国市場に対する視点について日本企業3社のパネリストの見解が示された。

 ホンダの池史彦代表取締役会長は「米国で成功すればどの地でも通用すると考えて進出した。グローバルな視点を維持しながら世界的な顧客満足を追求する企業理念にのっとって、日本の自動車メーカーの中でいち早く米国現地生産を決断した。自社を含む日本企業は米国の力強く巨大な市場に支えられてきたが、今後は米国の経済や国民に貢献しながら成長を続けていきたい」と述べた。

 三菱商事の小林健代表取締役社長は「米国市場は資源エネルギー市場の大切な源であり、規制緩和で大きな市場が開放されている。新たなビジネスモデル、テクノロジーが生まれる最も大切な市場だ。近年は健全な経済成長を続けるアジアにも焦点を合わせ、米国とアジアの橋渡しを行っているが、米国での経験を生かしアジアをさらに成長させることで太平洋両側の成長に貢献したい」と述べた。

 キッコーマンの茂木友三郎取締役名誉会長兼取締役会議議長は「米国の料理にしょうゆを使ってもらおうというのが進出のきっかけだった。潜在的需要を開拓するためにスーパーでデモ販売を行い、新聞や出版物でしょうゆを使ったレシピを紹介するなどしてゆっくり確実に知名度を上げていった。1973年に米国内生産を開始し、全米のマーケットシェアは55%、西海岸では70%に達している。機会があれば、製造拠点を是非見に来てほしい」と述べた。

 さらに、経済成長のために日本が今後克服すべき課題について意見が交わされた。シーベルCEOは日本の英語レベルのほか、失敗してはいけないという価値観がイノベーション受け入れの障害になっていると指摘した。ゴースキーCEOは規制緩和などによるイノベーションを推進する取り組みと女性の活躍を、池会長は規制緩和と民間のイノベーション推進をそれぞれ挙げた。小林社長はイノベーションによる現状打破の必要性について述べた。

 質疑応答では、高齢化に対する日本の対応を問う質問があり、ゴースキーCEOは労働生産性の向上や移民政策により労働力を増やすなど、いろいろな方法を組み合わせることが必要だと述べた。また、アベノミクスは製造業のイノベーションに対してどのような努力をしているのかという質問に対して、池会長は日本の製造業を代表して、生産性を高めるための産学官一体となった取り組みを挙げた。

<ケネディ駐日大使は「日本に来て、見てほしい」と強調>
 パネルディスカッション終了後、キャロライン・ケネディ駐日大使が「日米の成功のためには双方向のパートナーシップが重要であり、米国企業はぜひ日本に来て日本の可能性を実感してほしい。そうすればチャンスとやる気に満ちたイノベーションのパートナーシップを見つけることができるだろう。アベノミクスは米国企業や労働市場、日本経済の変革を良い方向に導くと確信している」と述べた。

 また、プリツカー商務長官は「米国企業の日本への投資機会が増えることを期待しており、安倍首相と協力して対日投資の倍増目標を実現したいと考えている。環太平洋パートナーシップ(TPP)のもたらす市場機会は極めて大きく、オバマ政権はTPPに全てを賭けている。商務長官として重要な貿易交渉を完結させるためにあらゆる措置を講じ、両国の経済発展につなげることを願う」と述べた。

 最後に登壇した安倍首相は「直接投資は日米経済関係の基盤であり、米国企業には対日投資をもっと増やしてほしい。アベノミクス以降、日本は投資先としての魅力を高めており、今後も内外一体となった成長戦略を実行し、日本の立地競争力を高めていく。今日、この会場から日米の新たな関係と時代が始まることを期待する」と締めくくり、セミナーは活況のうちに終了した。

<レセプションでは進出日系企業によるブース出展も>
 安倍首相のほか、ケネディ駐日大使、プリツカー商務長官、ロサンゼルスのエリック・ガルセッティ市長らが出席したレセプションでは進出日系企業などによる展示会も行われた。会場には28の進出日系企業や団体がブースを出展し、多くの日系企業が地域経済に貢献していることをアピールするとともに、日米の参加者相互が交流する貴重な機会となった。

(桑田弦)

(米国、日本)

ビジネス短信 e05db4ceecffdce1