対外は887億1,700万ユーロ、EU向けが活発化-2014年の直接投資動向(2)-

(ドイツ)

デュッセルドルフ事務所

2015年05月29日

 ドイツの2014年の対外直接投資額は887億1,700万ユーロと、533億6,000万ユーロだった2013年に比べ大きく伸びた。特にEUへの投資が活発化し、全体の約8割を占めた。非ユーロ圏への投資も大幅に拡大した。一方、アジア大洋州と北米への投資は鈍化している。連載の後編は対外直接投資。

<EU向けが投資全体の約8割を占める>
 ドイツ連邦銀行によると、2014年の対外直接投資額は887億1,700万ユーロで2013年の533億6,000万ユーロに比べ66.3%伸びた(表参照)。国・地域別にみると、EUが716億9,000万ユーロで全体の約8割を占め、最大の投資先だった。そのうち、ユーロ圏が444億6,700万ユーロとなり、特にオランダとルクセンブルクへの投資が2倍前後に増加したほか、フランスへの投資も急拡大した。

 フランスへの投資案件として、化学大手のヘンケルがランドリー・ホームケア事業の強化を図り、漂白剤や家庭用品などに特化したスポットレス・グループを9億4,000万ユーロで買収すると発表(2014年6月)した事例がある。

 非ユーロ圏への投資は272億2,300万ユーロと前年より大きく伸び、英国が117億8,000万ユーロで同地域において最大の投資先だった。鉄鋼大手ティッセン・クルップのグループ会社であるティッセンクルップ・エレベーターは販売網とサービスネットワークを強化するため、同業リフト・アンド・エンジニアリング・サービシーズの買収を発表した(2014年12月)。

<アジアで目に付く大手企業の中国進出>
 EU域外の動向をみると、アジア大洋州への投資は83億3,700万ユーロと2013年より減少した。うち中国への投資は51億2,100万ユーロで、同地域への投資の約6割を占めた。化学大手のBASFは2020年までにアジアでの現地化を進め、提携先と2013~2020年の間に100億ユーロを投資する戦略を掲げている。その一環として同社は、アジア市場における需要増加に対応し、上海に触媒工場を建設すると発表した(2014年12月)。生産開始は2016年第4四半期の見込み。そのほか、フォルクスワーゲン(VW)とティッセンクルップも中国に新生産拠点を設立(2014年11月26日記事参照)し、中国はドイツ企業にとって依然として魅力的な投資先となっている。

 日本への投資は2億3,500万ユーロと、2013年に比べ半分以下に急減した。しかし、投資が減速する中、目立つ投資案件もあった。自動車部品大手のコンチネンタルは日本におけるタイヤ販売事業を強化し、2014年6月に東京にコンチネンタルタイヤ・ジャパンを設立した。

<ブラジルとアフリカも重要な投資先に>
 その他の主要地域をみると、米国への投資が1億8,600万ユーロの引き揚げ超過となった影響を受け、北米への投資は5億4,700万ユーロと2013年より大幅に減少した。米国では、ティッセンクルップがアラバマ州の工場を新日鉄住金とアルセロール・ミッタルに15億5,000万ドルで売却したと発表(2014年2月)した。中南米への投資も2013年に比べ半減した。うちブラジルは13億8,600万ユーロで同地域で最大の投資先となった。自動車部品メーカーのグラマーは、サンパウロ近辺のアチバイアにある生産拠点を拡張したと発表(2014年7月)。同拠点では従来、商用車・農業機械用のシートを生産していたが、今後は自動車市場への本格参入を図り、ヘッドレストなど自動車用の内装部品を生産する狙い。

 ドイツ企業は近年、アフリカを重要な投資先として捉えている。同地域への投資は18億8,100万ユーロと大きく拡大した。投資案件として、化粧品・食品用の香料を開発・製造するシムライズはアフリカビジネスを強化し、ナイジェリアのラゴスに西アフリカ市場のニーズに特化した製品を提供するための子会社を設立した事例(2014年10月)が挙げられる。また、シムライズはマダガスカルにおける生産拠点の開所も同時期に発表した。同拠点ではバニラ香料を生産し、投資額は300万ユーロに上る。

(ゼバスティアン・シュミット)

(ドイツ)

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