国家医療保険料を27年ぶりに引き上げ
(ケニア)
ナイロビ事務所
2015年05月22日
ケニアの国家医療保険基金(NHIF)は、国家医療保険基金法(NHIF Act)に基づき保健長官と協議の上、1988年以来据え置かれていた保険料を27年ぶりに引き上げた。労働組合や産業界から反対はあったものの、4月1日から新たな保険料が適用されている。引き上げ幅は最大で5.3倍となった。
<幅広い医療サービスが対象に>
2015年2月6日の公示によると、NHIF(National Hospital Insurance Fund)は国家医療保険基金法に基づき保健長官と協議し、基金規則を改正した。新規則では基準所得額の区分を変更し、国家医療保険料を引き上げた。
雇用者は従業員の総所得額に応じて、給与から規定の月額を控除した上でNHIFに納付する義務を負う。1988年から月額320ケニア・シリング(約384円、Ksh、1Ksh=約1.2円)以下に据え置かれていた保険料は、同規則改正により月額150~1,700Kshに引き上げられた(表参照)。自営業者の保険料は、一律160Kshが500Kshとなった。
NHIFは増加した保険料収入により、入院患者および外来患者に対する幅広い医療サービスを保険の対象に含めるとしている。保険の対象者は被保険者およびその扶養家族で、以前は主に入院患者のベッド代しか認められなかった保険対象医療サービスは診療、入院、薬、X線検査、出産などに拡充される。ただし、NHIFは医療保険でカバーされる医療施設は公立病院と低価格の私立病院に限定されるとしている。
<産業界は総所得の定義があいまいと批判>
ケニアにおける医療保険料の引き上げに関する議論は新しいものではなく、2010年からNHIF理事会によって見直しがたびたび提議されていた。その都度、労働組合中央団体(Central Organization of Trade Unions:COTU)やケニア経営者連盟(Federation of Kenya Employers:FKE)など産業界から反対の声が上がり、実現が見送られていた。
COTUは、過去のNHIFの汚職問題などNHIFによる保険金の管理能力に懸念を表明しながらも、NHIFが当初提示した保険料の水準を引き下げたことから受け入れた。FKEは新たな保険料に理解を示したものの、保険料率の基準所得額が総所得とされており、その定義があいまいだとしてNHIFを批判している。FKEは会員企業に対し、従業員の基本給を基準に保険料を控除して納付するよう呼び掛けている。
なお、2014年1月から施行される予定だった社会保障基金法(NSSF Act 2013)に基づく社会保険料の引き上げに関しては、産業界や労働組合の反発が強く、いまだに実現に至っていない。
(島川博行)
(ケニア)
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