新たな輸入特別税導入、投資の特典が相殺される懸念も-一部プラスチック製品と電気製品に10%課税-

(カンボジア)

プノンペン事務所

2015年05月01日

 一部のプラスチック製品(半製品を含む)や電気製品が1月1日から、輸入時の特別税(10%)の課税対象となった。その後、投資適格案件(QIP)として認定を受けている縫製業と関連業については一部免除となったものの、今回の特別税の導入によってカンボジアへの投資の特典が相殺されるのではないかと懸念されている。

<特別税の2%分は環境対策に充当>
 カンボジアの特別税(Special TaxまたはSpecific Tax)は、税法第85条に基づき特定の品目を輸入または国内で生産した場合や、特定の財またはサービスの供給に対して課される。輸入の場合はCIF価格に関税を含めた金額に適用され、2014年時点では、自動車・バイクなど、アルコール類、たばこ、石油・歴青油およびその製品などが対象だった。

 特別税の課税対象となるのは、ぜいたく品や健康・環境への配慮という理由で「国内での流通を制限したい」品目だ。2014年8月の政令第239号により新たに対象となった一部のプラスチック製品108品目(半製品59品目を含む)と電気製品155品目(添付資料参照)についても、特別税10%のうち2%分は環境対策に使うと定められている。

<プノンペンSEZの日系企業が異議>
 今回のプラスチック製品や電気製品への特別税で問題となっているのが、カンボジアへの投資で最大の魅力ともいえるQIPとの兼ね合いだ。例えば、縫製業では製品の梱包(こんぽう)用のプラスチックバッグ、製造業では部品の結合に使うプラスチック部品などを輸入しており、QIPの認定を受けることによってマスターリスト(注)で輸入量を申告した原材料については関税が最大9年間免除されている。しかし、今回の措置によって、特別税分がコストに上乗せされ、関税免除の特典が相殺される可能性がある。

 プノンペン経済特区(SEZ)に入居する日系企業が特別税の課税に異議を唱えたことから、政府は課税を保留しており、3月26日には関税消費税総局長から「QIP認定を受けている縫製企業および縫製関連企業に対して、あらかじめマスターリストに記載している原材料の輸入については特別税を免除する。その他の製造業に対しては、22品目(添付資料の表の網掛け部分)について特別税を免除する」との通達があった。しかし、通達は縫製業を優遇しており不公平感があるとして、日系企業は日本人商工会などを通じて政府との交渉を続けている。

 進出日系企業からは、2015年末までに発足予定のASEAN経済共同体(AEC)での経済活動やカンボジア政府が掲げる産業政策推進に対しても、この特別税は足かせになるのではないかという懸念が聞かれる。

 なお、HSコードについてはジェトロウェブサイトを参照のこと。

(注)QIP認可企業が輸入関税の免税を受けるには、輸入者はカンボジア投資委員会またはカンボジア経済特区委員会に毎年輸入する品目のマスターリストを提出して、原材料の量、種類、価格などを含む年間輸入計画の承認を得る必要がある。

(上田委枝)

(カンボジア)

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