地域本部設立に新優遇税制を適用-政府が4つの投資優遇策発表-

(マレーシア)

クアラルンプール事務所

2015年04月22日

マレーシア投資開発庁(MIDA)は4月6日、4つの投資優遇のための新税制を発表した。そのうちの1つ、地域のハブを目指し同国に統括拠点を置く企業を優遇する「プリンシパルハブ・インセンティブ」は、2014年10月にナジブ首相が発表した2015年予算案の中で言及された新税制の具体化だ。本税制はマレーシアを地域のハブにしようとする企業にとって利用価値がある。

<ハブ拠点は法人税率を0~10%に軽減>
 「プリンシパルハブ」はマレーシア設立法人で、マレーシアを統括拠点として活用する企業のことを指す。具体的には、リスク管理、意思決定、戦略的事業活動、貿易、金融、経営・人事管理を含む重要な機能の運営、管理、支援を行う企業だ。2014年10月の2015年予算案(2014年10月21日記事参照)発表時にナジブ首相は多国籍企業の統括拠点の誘致にさらに力を入れる意向を示し、2015年の早い時期にそのための優遇策を発表するとしていた。

 ハブと認定された企業は、基本5年に加えて延長5年の最長で10年間の優遇法人税率を享受できる。法人優遇税率は年間事業支出額や雇用条件によって、0%、5%、10%の3段階に分かれる。なお、プリンシパルハブとなるための立地条件は特にない。申請機関はMIDAで、期間は2015年5月1日から2018年4月30日までの期間となる。新制度導入により、現在の地域統括会社〔経営統括本社(OHQ)、国際的資材調達センター(IPC)、地域物流センター(RDC)〕に与えられている優遇措置は廃止となる。

 上述の企業形態を前提とした上で、政府が課す主要な条件は、以下のとおり(表参照)。(1)最低払込資本金は250万リンギ(約8,250万円、1リンギ=約33円)、(2)物品取引会社の場合は最低年間売上高3億リンギ、(3)関連企業などがマレーシア以外に3ヵ国以上に立地、(4)政府が適格と認める戦略ビジネス企画部門の設置や研究開発などのサービスを3種以上提供、(5)月給5,000リンギ以上の高付加価値業務に就く従業員数をサプライヤー(Tier)ごとに3段階(Tier1:50人、Tier2:30人、Tier3:15人)に設定、(6)優遇期間の延長に当たっては、高付加価値業務に従事する人員を20%、事業支出を30%増やす必要がある。

<自動化設備投資には200%の償却認める>
 政府はその他の優遇税制として、以下の3つを発表した。これらの優遇税制は2015年予算案の発表時にある程度具体的な説明がされていたが、今回はさらに踏み込んだかたちで詳細が発表された。

(1)低開発地域への投資優遇措置。主要な措置は、最大15年間の法人税免除あるいは10年以内になされた投資額の100%税額控除(ITA)。なお、低開発地域の具体的な発表はなく、優遇税制の適用可否はMIDA、各経済回廊運営機関や関係機関が事案ごとに判断するとした。

(2)工業団地の管理に関するインセンティブを導入。本税制はマレーシアの工業団地の魅力向上のために導入する。現在、マレーシアにはセランゴール州の250を筆頭に595の工業団地がある。しかし、団地ごとに整備状況が異なるために、入居者のニーズを満たさない例も散見される。そのため本制度によって、州当局からライセンスを取得した工業団地の管理を行う企業は5年間の法人税100%免除を享受できる。

(3)労働集約型産業の自動化設備導入へのインセンティブ。技術革新や生産性向上のために導入される本制度は、マレーシアで36ヵ月以上操業している企業が対象となる。ゴム製品、プラスチック、木材、家具、繊維の5業種には2015~2017年に実施する400万リンギまでの自動化設備投資に200%の償却が認められる。その他の産業は、2015~2020年の200万リンギまでの投資において同様の恩典が受けられる。

 なお、新税制の適用条件・内容などに関する詳細はMIDAのウェブサイトを参照のこと。

(新田浩之)

(マレーシア)

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