新型車に車両緊急通報システムの導入を義務付け−排ガス規制は2016年1月から「ユーロ5」に−

(ロシア)

サンクトペテルブルク事務所・モスクワ事務所

2015年04月20日

新型車への車両緊急通報システムの導入が1月1日から義務付けられた。また、自動車の排ガス規制も、2016年1月1日からEUの「ユーロ5」に移行し、強化される予定だ。

<交通事故現場への到達時間を短縮>
 ロシアでは、2013年1月30日付ユーラシア経済委員会評議会決定第6号「関税同盟技術規則『車両の安全について』の修正について」により、2015年1月1日以降に新たに型式認証を受ける車両に対して、車両緊急通報システム「ERA-GLONASS」の導入が義務付けられた。型式変更などの車両は対象とならない。同システムは、ロシアが運用する衛星測位システム「GLONASS」によって、車両、オペレーションセンター、救急車両、内務省、非常事態省などを連結し、交通事故時の現場到達時間を30%短縮しようというもの。

 2016年1月1日には関税同盟内の、6~16歳の子供を送迎する商用車、危険物輸送車、家庭廃棄物・ごみ輸送車、危険物輸送用トレーラーを牽引するトラクターに、2017年1月1日以降は、関税同盟内の全ての新車に導入義務の対象範囲が拡大される。EUでも同様のシステムとして「eCall」が2015年内に導入される予定だったが、法整備に遅れが生じており、導入開始は2018年3月と予想されている。

<ユーロ5への移行延期を求める声も>
 2011年12月9日付関税同盟委員会決定第877号「関税同盟技術規則『車両の安全について』」により、ロシア国内では現在、自動車(乗用車や商用車など)の排ガス規制としてユーロ4(注)が適用されている。ユーロ4に適合していないエンジンを搭載した新車の販売は認められていない。なお、2016年1月1日からはさらに厳しいユーロ5に移行する予定だ。

 また自動車用ガソリンについては、2011年10月18日付関税同盟委員会決定第826号「関税同盟技術規則『自動車・航空機ガソリン、軽油、船舶用燃料、ジェット燃料、灯油について』」に基づき、ユーロ3適合のガソリンの国内販売が2015年1月1日から認められていないほか、ユーロ4適合のガソリンも2016年1月1日以降は販売が認められなくなる予定だ。

 自動車専門調査会社アフトスタトによると、2015年初の時点で国内で登録されている乗用車(計4,085万台)は、ユーロ2以下が2,123万台、ユーロ3が608万台、ユーロ4が1,139万台、ユーロ5以上が215万台と、ユーロ2以下が約半数を占めている。また商用車(計807万台)は、ユーロ2以下が592万台と約73%を占め、ユーロ3が111万台、ユーロ4が90万台、ユーロ5以上が14万台となっている。ちなみにモスクワ市では、自動車の排ガスによる環境汚染が深刻だとして、2015年9月1日からモスクワ環状道路ではユーロ0あるいはユーロ1の、その内側の第3環状道路ではユーロ3以下のトラックの走行を規制する動きが出ている。

 ユーロ5への移行を前に国内の自動車メーカーからは、最近の自動車市場の厳しい状況から移行延期を求める声も出ている。下院の工業・特殊技術イノベーション発展諮問委員会のアリフィア・コゴギナ委員長は「ユーロ4とユーロ5の違いは大きくないため、環境配慮の観点からは延期による影響は小さい。他方、自動車メーカーへの経済的な支援という観点では延期が不可欠」とコメントしている。VTBキャピタルのアナリストのウラジミル・ベスパロフ氏は「この時期の追加投資や自動車価格の上昇は、昨今の自動車市場の厳しい状況をさらに悪化させることになる」と述べている(「コメルサント」紙3月27日)。

(注)EUにおける自動車排出ガス規制のこと。後に付く数字は、規制強化の段階を表す。

(宮川嵩浩、齋藤寛)

(ロシア)

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