ハバロフスク地方と沿海地方の3特区を選定−整備始まる極東の投資誘致制度(2)−

(ロシア)

モスクワ事務所・欧州ロシアCIS課

2015年04月15日

ロシア極東の投資誘致制度の後編。ロシア極東では新しい経済発展モデルとして優先的社会経済発展区域(TOR)に関する制度が創設され、対象区域の第1弾として3つのTORが選定された。うち2つはハバロフスク地方、1つは沿海地方に立地し、航空機部品製造や建築資材生産、農業、物流などの拠点として活用される見込み。選定に当たっては、投資プロジェクトの需要と投資家の意欲を重要視したようだ。

<極東の社会経済発展の新モデルに>
TORは、2013年10月24日にコムソモリスク・ナ・アムーレで開催されたメドベージェフ首相主導の政府委員会会合での決定に基づくものだ。同会合では、ロシア極東に外国からの投資を含む直接投資を呼び込み、中小企業を含めたビジネス活動を発展させるため、ロシア極東の社会経済発展の新しいモデル(TOR創設)と投資環境整備に関する重要な決定が行われた。

2015年2月12日には、ユーリ・トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表がロシア極東における投資プロジェクトの実施に関する小委員会を開催し、第1弾のTORとしてハバロフスク地方と沿海地方の計3区域に選定したと発表した。

<投資家の意欲も選定に当たって重視>
ハバロフスク地方ではハバロフスク市とコムソモリスク・ナ・アムーレ市内の区域(それぞれTOR「ハバロフスク」、TOR「コムソモリスク」)、沿海地方ではウラジオストク市から北に30キロの地区(TOR「ナデジンスキー」)が承認された。

ハバロフスク地方のTORコムソモリスクは、航空機メーカーのスホイや関連部品メーカーの立地が主となる見込み。TORハバロフスクには、ラキトノエ地区、工業団地アバンガルド、ハバロフスク空港近郊の3つの区域が含まれている。ラキトノエ地区は主として、建築資材や農業生産、物流倉庫で構成される見込み。ハバロフスク空港近郊区域では、新空港ターミナルやホテルなどの施設が建設される。

ハバロフスク地方の2つのTORの主要な投資家としては、テクノニコル(建材生産)、ネバダ(小売り・食品加工)、エナジーグループ(エンジニアリング)、MTE(投資会社)が挙がっている(いずれもロシア企業)。また、TORハバロフスクについては、いずれもアスファルトメーカーである中国の江蘇宝利瀝青とオランダ系ビツミナが合弁でシンガポールに設立した宝利ビツミナが、進出に関心を示している。同社は2月にクラスノヤルスクで開催された経済フォーラムで、極東発展省とアスファルト製品工場設立に関する覚書を締結した。

沿海地方のTORナデジンスキーは物流施設、ドライポート、食品生産などで構成される。主要投資家は、ネバダとインコムDV(物流会社)になる予定だ。

トルトネフ副首相兼極東連邦管区全権代表によると、400を超える候補地からTORとしてふさわしいエリアを暫定的に選定したという。選定に当たっては、a.当該地域における投資プロジェクト需要の存在、b.インフラ整備の余地、など幾つかの基準で絞り込んでおり、特に重要な条件として、開発予算の無駄遣いを避けるために、主要な投資家の意欲も確認したという。政府予算から投じる資金は、新規雇用や新規ビジネスの創出を通じた税収増で回収する見込みだ。

<4月中にTOR区域を追加の方針>
上記3区域以外にも、ロシア極東のさまざまな地域からTOR選定を目指して15を超える新しい申請が出ており、現在、検討段階にある。その中には、沿海地方における中国・北朝鮮との国境近くのザルビノ港、ナホトカの石油化学コンプレックス、ミハイロフスキー地区の農業クラスター、スホドル地区の石炭ターミナルなどが含まれている。ロシア政府は、4月中に対象となる区域を追加する方針を明らかにしている。

(タギール・フジヤトフ、浅元薫哉)

(ロシア)

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