ビタパークとサワン・セノSEZの整備進む−国境地域での周辺国との補完的開発も模索−

(ラオス)

ビエンチャン事務所

2015年04月10日

「タイプラスワン」の動きに伴い、日系製造業の進出が増えている。特にビタパークとサワン・セノの経済特区(SEZ)は手厚い投資優遇制度があり、インフラ整備も進んできたことから、進出候補地として注目されている。こうした中、ベトナム、タイ、中国との国境地域では、両国がそれぞれSEZや開発区を設けた補完的な開発が模索され始めている。

<タイプラスワンの動きに伴い進出>
2月10日にラオス南部のサワン・セノSEZでトヨタ紡織の工場の、また2月19日には首都ビエンチャンのビタパークSEZで三菱マテリアルの工場の開所式が行われた。ラオスでは現在、全国で10ヵ所のSEZが認可を受け、その開発が行われているが、日系製造業の進出は東西経済回廊に位置するサワン・セノとビタパークのSEZを中心に進んでいる。これは他のSEZが、インフラ整備の遅れに加え、観光特区、商業特区など非製造業向けが中心であるのに対し、サワン・セノとビタパークは製造業を中心とし、インフラ整備も進んでいることがその理由だ。

日系製造業は製造ラインの一部を周辺国へと移転するタイプラスワンの動きが進んでいるが、ラオスもその移転候補先となっている。これは(1)タイ語とラオス語が類似していることから、タイ人エンジニアや管理者の派遣や技術移転が容易、(2)電気代が廉価、(3)比較的手厚い投資優遇制度(表参照)、(4)安い労働力や土地価格、などの点が魅力となっている。

ラオスのSEZと一般地区の優遇制度の比較

<国境を越えて拡大するSEZ>
メコン地域では、国境の両側に工業団地やSEZを整備することで、補完的に地域経済を活性化しようという取り組みが始まっている。ラオスと中国間では、ラオス側のボーテンデーンガームSEZと中国側のモーハン経済開発区の、より機能的な開発を目指し「モーハン−ボーテン経済合作区」として展開するため、2010年に共同枠組み協定を締結、2013年には共同委員会を設置し協議を進めている。ここでは国境地域における商品貿易、サービス貿易と投資の自由開放政策を実施する計画。両国の法律が禁止する商品以外の両国原産の物品は輸出入が自由で、関税と関連する税が免除される構想で、同経済合作区が中国南西部とASEAN間の輸送ハブとなることも期待されている。

また、ラオスとベトナムの国境である東西経済回廊上のデンサワン(ラオス)−ラオバオ(ベトナム)地域は、ラオス政府が2002年にデンサワン国境貿易区に指定し、今後SEZへの格上げも計画している。一方、ベトナム政府は2005年からラオバオ特別経済商業区を認可し、東西経済回廊の活性化を図ってきた。

さらに、タイ政府による国境地域へのSEZ建設構想がある。第1フェーズとして5ヵ所、第2フェーズとして別の5ヵ所をSEZとして整備していくもので、このうちラオスと国境を接する地域については、第1フェーズのムクダハーン、第2フェーズのノンカイ、ナコンパノム、チェンライの4SEZとなっている。開発の方向性や投資優遇制度の内容などはまだ決定していないが、ムクダハーンSEZでは輸送ハブや電気電子産業の集積を目指し、ノンカイSEZはASEAN中国間の輸送ハブ、観光、軽工業、農産品加工などを計画しているとされる。なおこれらの地域では、外国人労働者の往来を容易にするような制度が導入される見込みだ。

<強みを生かし補完する国境経済区の開発へ>
タイでは賃金の上昇に伴い労働集約的な産業が周辺国へ移転する動きが出ている中、投資委員会(BOI)の新投資奨励制度が1月1日に開始され、高付加価値産業の集積を目指す方向性が打ち出された。こうした状況下、タイとしてどのようなSEZ整備を目指すのか、特にラオス側のSEZとの連携をどのように進めていくのか注目されている。

ラオス側の労働力がタイ側に流出し、ラオス側の産業の空洞化を招くことは長期的には両国の利にならないだろう。こうした観点から、2014年11月26日に行われたトンシン首相とタイのプラユット首相との首脳会談を契機に、政府間レベルの協議も始まっている。2015年1月24日のトンルン外相とタイのタナサック外相による第19回ラオス・タイ協力委員会では、SEZ開発についての協力方針を協議することが合意され、2月4〜5日には第6回ラオス・タイ商工省協力計画会議が開催された。2014年の両国の貿易額54億4,000万ドルを2017年には81億6,000万ドルへと拡大するため、特にタイのムクダハーンとラオスのサワンナケート両都市の関係を強化し、SEZの連携を進める方向性が示された。

ラオス商工省通商政策局のサイサナ副局長は「両国のSEZ開発は、競合ではなく協力することでメコン地域全体の経済活性化を図りたい」と述べる。両国それぞれが持つ強みを生かし、補完的な国境経済区の開発が模索され始めている。

ラオス周辺の主なSEZ開発

(山田健一郎)

(ラオス)

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