電子申請が可能になり手続きが迅速化−法人登記法を改正−

(モンゴル)

北京事務所

2015年04月08日

モンゴル国会の改正法人登記法の可決(1月29日)を受け、政府は3月1日、同法と改定関連規則を施行した。今回の改正のポイントは、(1)従来の窓口申請に加えて電子申請(インターネットでの登記申請)が可能になり、手続きが簡略化・迅速化、(2)印鑑登録の導入、(3)法人登記内容の変更履歴を管理する履歴番号の導入、(4)電子署名への対応、(5)新たにNGOの登記が必要になったこと、(6)外国法人の駐在員事務所の更新期限が2年に延長されたこと、などが挙げられる。

<窓口申請なくなり手続き時間が短縮>
モンゴルで法人登記法が全面改正(以下、新法)されるのは、2003年以来で12年ぶり。改正に合わせて、(1)法人名の取得・承認に関する規則(以下、法人名規則)、(2)外国法人の駐在員事務所の登記に関する規則(以下、駐在事務所規則)、(3)法人登記に関する規則、(4)個人・法人の印鑑・承認印の作成・使用の管理・証明書の発給に関する規則(以下、印鑑規則)、(5)法人履歴の記録に関する規則、(6)帳票・インデックス・承認印の様式に関する規則が改定された。

従来の法人登記法では、電子申請にかかる規定はあったものの、運用されていなかったため、実質的には窓口での書面による申請に限られていた。国家登録局周辺の交通渋滞、窓口での順番待ちなど、これまで法人登記手続きは煩雑だった。しかし、今回の改正により、法人名の取得、法人登記申請(新法6.1)、受理票の発給(新法17.6)、可否回答の通知(新法13.2)、記載事項証明書の申請・発給(新法12.2.1)などが電子化され、国家登録局での窓口申請の必要がなくなり、手続き時間の短縮化などが期待される。

電子申請した場合、登記許可の通知を受け取ってから5日以内に提出書類の原本を窓口に提出しなければならない(新法13.3)が、原本の書類に電子署名がある場合は原本の提出も不要になる(新法13.4)。これは現在、モンゴルでは税務申告の現場でデジタル署名が使われており、今後法人登記にもデジタル署名が普及してくることを見越した法改正だ。しかし、普及するまでは当面、書面による原本の提出が必要になる。

審査日数について、外資系企業以外の法人に関しては、従来の5日以内から2日以内に短縮された(新法13.1)。しかし、外資系企業は従来と同じ10日以内で、必要書類の種類・数も従来とほとんど変わらない。

<新たに印鑑登録制度を導入>
国家登録局が設立を許可した法人には印鑑管理番号を発給し、それに基づき印鑑作成業者で印鑑を作成する。印影は印鑑作成業者から毎月まとめて登録局に電子データで送られ、データベースに登録される(印鑑規則2.1.3)。

個人や任意団体(法人格を持たない組織)は、希望すれば印鑑管理番号を取得して印鑑を作成することができる(印鑑規則2.2.1)。印鑑を紛失・破損した場合や法人の名称・形態を変更した場合は、印鑑管理番号を新たに発給して印鑑を再発行する(印鑑規則2.2.3、2.2.4)。印鑑管理番号を取得して30日以内に印鑑を作成しなかった場合、印鑑管理番号は無効になる(印鑑規則4.7)などの印鑑登録制度が新たに導入された。

このほか、主な改正・改定ポイントは以下のとおり。

○法人名取得関係
・法人名取得が電子化され、窓口に行く必要がなくなった。従来どおり窓口での取得も可能 (法人名規則2.1)。
・法人名は1人1日3件まで取得可能 (法人名規則2.4)。
・既に登記されている法人名の前後に、法人形式を指した単語をつなげて取得することは不可能(法人名規則3.10)。
・法人名は取得から10日以内に登記申請しなければならない(新法14.3)。
・法人名取得後10日以内に登記申請しなかった場合、その法人名を再取得する(新法14.4)。

○登記変更履歴と記載事項証明
・法人の登記内容の変更履歴を管理するため、履歴番号を導入(新法第3章)。
・記載事項証明書は、書面または電子媒体により、申請・発給が可能(新法12.2.1)。

○その他
・法律事務所の登記に関する規定を追加(新法17.3)。
・NGOも登記が必要になったこと(新法8.1.4)。
・駐在員事務所の登録期間を2年間とし、必要なら2年ごとに更新可能(駐在事務所規則1.4、従来は1年ごとに更新が必要だった)。

(藤井一範)

(モンゴル)

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